管理費の負担の差異はどこまで許容されるのか?
区分所有法18条1項は、「共用部分の管理に関する事項は、……集会の決議で決する」と定めていますので、管理費は、総会の普通決議で定めることができます。ただし、原始規約で管理費の金額が定められているときは、それを改定するためには、区分所有者の数および議決権の各4分の3以上の賛成が必要となり、管理費の値上げが困難になる状況が見受けられます。そのような場合には、まず、管理費の金額はそのままにして、管理費を規約事項としている規定を削除することから始めるのがよいようです。
区分所有法19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と定めており、管理費の負担割合は、原則として共用部分の持分割合=専有部分の床面積割合によります。ただし、規約で別段の定めをすることができます。修繕積立金についても同様に考えられています。
管理費等の負担の差異がどこまで許容されるかは、当該差異が合理的と評価できるか否か、という観点から総合判断せざるを得ず、許容範囲を数値化することは困難です。しかし、区分所有法19条の趣旨および規約の内容について区分所有者間の利害の衡平を図らなければならないとする同法30条3項からすれば、たとえば専有部分の床面積割合による負担とされているにもかかわらず、他と比較して2倍以上の格差がある場合には無効となるものと考えられます。
専有部分の用途別に管理費等に差を設ける場合は・・・
なお、専有部分の用途別に管理費等に差を設けることは、合理的な理由があれば2倍以上の格差も有効とした裁判例があります。住居部分と店舗部分では、たとえば、不特定多数の人が出入りするなど、共用部分や敷地の利用状況や態様が異なるなどの合理的な理由がある場合には、管理費の負担割合に差を設けることも一般に許容されています(東京地裁昭和58年5月30日判決(判時1094号57頁)は、店舗部分について、住居部分の2倍以上の管理費を定めた規約を有効としています)。
どのくらいの差までが有効となるかはケースによります。ただし、使用頻度の立証となるとなかなか困難な面もあり、判例の傾向としては使用頻度の差は、管理費に差を設ける合理的理由とはならないとする傾向がありそうです(東京高裁昭和59年11月29日判決(判時1139号44頁))。
また、法人と個人で、管理費に差を設ける総会決議の有効性が争われた事案では、負担能力の差は、合理的な理由とならないとして、法人と個人1.72対1、1.65対1の差異を設けた総会決議を無効としています(東京地裁平成2年7月24日判決(判時1382号83頁))。
平成14年改正で新設された区分所有法30条3項は、「規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設……につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」としていますので、今後、事例の集積が待たれるところです。