収益事業の開始時に提出すべき書類とその期限
⑴収益事業開始の届出
管理組合等が収益事業を開始したときには、以下の書類等を提出しなければなりません。
①収益事業開始届出書所轄税務署長に対して、収益事業を開始した日以後2カ月以内に、管理規約を添付して提出します。
②青色申告承認申請書(任意)所轄税務署長に対して収益事業開始日以後3カ月を経過した日か事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに提出します。
③法人住民税、事業税税務署に対するものと同様、所轄都税事務所(県税事務所)、市役所に対して必ず事業開始届出書を提出します。
⑵申告手続
原則として事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に確定した決算に基づき、マンションの所在地を所轄する税務署長に法人税の確定申告書を提出し、納税します。
確定申告書には下記の書類を添付します。
①貸借対照表(必ずしも必要ではありません)
②損益計算書または収支計算書共通経費を計上する場合には算定基準の記載があったほうがよいでしょう。
③概況書
④管理費会計の収支計算書
⑤修繕積立金会計の収支計算書
駐車場貸付け等の収益事業会計、管理費収入の管理費会計、修繕積立金を扱う修繕積立金会計は、経理処理上一体となって計算されますので、それぞれの収支明細の添付が必要になります。
たとえば、収益事業の期間が4月から翌年3月の場合、申告期限は5月末となりますが、管理費会計が完了しないと収益事業会計も確定しないでしょう。もし、5月末までに収益事業の決算が確定しない場合には、事前に税務署等に届出をすることにより、申告期限を1カ月延長できます。ただし、延納の利子税が、平成28年12月現在、年率1.8%課税されます。
同時に東京23区の場合には都税事務所、23区以外の場合には都税事務所と市役所、県の場合には県税事務所と市役所へ法人住民税、事業税の申告および納税も行います。
法人税の税率は「資本金1億円以下の中小企業」と同じ
⑶税率および税額
管理組合等についての法人税の税率は、資本金1億円以下の中小企業と同じです。年800万円以下の所得(収入-経費)については、平成28年4月1日以後開始事業年度が15%、平成29年4月1日以後開始事業年度が19%になります。さらに、地方法人税が法人税額の4.4%(平成29年4月1日からは10.3%)課税されます。
法人住民税は法人税額の12.9%(東京23区の場合)の税割と7万円の均等割の合計額です。
法人事業税は所得金額に応じて所得金額の3.4%~6.7%の所得割と所得割の43.2%の地方法人特別税が課税されます。
(例)平成28年12月末で利益100万円が出た東京都江東区の管理組合の場合
法人税 100万円×15%=15万円地方
法人税 15万円×4.4%=6600円
都民税 15万円×12.9%=1万9300円
均等割 7万円
事業税 100万円×3.4%=3万4000円
3万4000円×43.2%=1万4600円
合計 29万4500円
⑷確定申告を行う者
確定申告については、管理組合等の組合員自ら行うことは可能ですし、税理士に申告を依頼することもできます。しかし、管理会社の社員が申告を代行することは税理士法違反となりますのでご注意ください。
⑸申告しない場合の罰則
管理組合等が収益事業を行い、申告義務があるにもかかわらず申告せず、無申告を税務署から指摘された場合、最長5年間さかのぼって申告しなければなりません。
この場合、下記の加算税が課税されます。
①無申告加算税(法人税) 納税額の15%から20%。
②不申告加算金(事業税) 納税額の15%から20%。
ただし、税務署から指摘を受ける前に自主申告した場合には、5%の加算となります。税務署からの問合せがきた場合、速やかに申告すれば、加算税はこの5%で済みます。
その他、税金を申告期限までに納付しなかったことによる延滞税(国税)と延滞金(地方税)が課税されます。平成28年8月現在年率2.8%となります。
管理組合等が収益事業を開始したときには、理事会、総会等において速やかに申告手続を進めることをご検討ください。
管理組合とマイナンバー
平成28年から施行されたマイナンバー制度ですが、管理組合等がマイナンバーの取扱者になる可能性はあります。理事に給料を支払う場合や税理士に報酬を支払う場合等です。
税務署に対して法定調書を提出する際に、理事の源泉徴収票や税理士の支払調書にマイナンバーを記入します。
マイナンバーは取扱いに十分気をつける必要があります。預かった者がマイナンバーを漏らした場合には厳格な罰則も設けられています。マイナンバーの記載書類は必ず鍵のかかるキャビネット等に保管しておきましょう。