今回は、マンション保険の代表な契約プランと地震保険の補償内容について見ていきます。※本連載では、マンション維持管理支援・専門家ネットワークの編著書『管理組合・理事のためのマンション管理実務必携』(民事法研究会)の中から一部を抜粋し、マンション管理組合に関連する「会計と税務」の基礎知識を紹介します。

一般的なマンション保険の一例

契約プランは、各マンションの形態でさまざまな違いがありますので、代表的な契約プランを紹介します。

 

【物件サンプル】

東京都荒川区所在

築18年、10階建て、住居数28戸

 

下記プランは、あくまでも一般的なマンション保険の一例です。

 

また、各マンションでの補償の相違点として、免責金額(保険使用の際に管理組合が負担する金額)が異なっていたり、水災が不担保にされている場合等々があります。

 

通常の火災保険の補償対象外となる「地震による火災」

平成28年(2016年)熊本地震が起き、いつ首都圏直下型地震や南海トラフ地震が起きてもおかしくないという状況にあり、最近、地震保険に加入する管理組合が増えています。

 

地震保険の補償内容としては、居住の用に供する建物および家財であり、地震により建物が倒壊・破損した場合、津波により建物が流された場合、地震により建物に火災が発生し炎上した場合、もしくは地震により火災が発生し範囲が拡大・延焼したことによって建物が炎上した場合に保険金が支払われることになります。

 

ここでポイントとなるのが、地震による火災は通常の火災保険の補償対象外となる点です。損害もしくは損害の拡大原因が地震の場合、地震保険でなければ保険の対象とはならないのです。

 

以下のとおり、従来、地震保険はその損害の程度により3段階での損害評価を行っていました。

 

●建物の損害の程度の基準

・全損:建物主要構造部への損害が時価額の50%、もしくは焼失・流失した床面積が70%以上となった場合

・半損:建物主要構造部への損害が時価額の20%以上~50%未満、もしくは焼失・流失した床面積が20%以上~70%未満となった場合

・一部損:建物主要構造部への損害は時価額の3%以上~20%未満、もしくは床上浸水か、地盤面から45cmを超える浸水を受け、その損害が全損・半損に至らない場合

 

●保険金の支払金額

・全損:地震保険金額の100%

・半損:地震保険金額の50%

・一部損:地震保険金額の5%

 

しかし、地震保険は平成29年1月より商品内容が改定されました。改定内容は、以下のとおりです。

 

●保険料の改定(全国平均で、約5%強の引上げ)

●損害区分の変更(半損が大半損と小半損の2区分に分割)

・大半損:建物主要構造部への損害が時価額の40%以上~50%未満、もしくは焼失・流失した床面積が50%以上~70%未満となった場合。支払保険金:地震保険金額の60%

・小半損:建物主要構造部への損害が時価額の20%以上~40%未満、もしくは焼失・流失した床面積が20%以上~50%未満となった場合。支払保険金:地震保険金額の30%

 

すでに契約されているものは改定前の内容にて損害認定等を行いますが、地震保険は最長5年契約となっています。そのため、満期を迎えた契約から、更新時に改定後の内容が適用されることになります。

 

個人賠償責任保険は、本来、個人でかける保険ですが、管理組合で一括してかけることができます。区分所有者が不注意で階下に水漏れ損害を与えた場合、保険が適用されますので、管理組合内のトラブルを防ぐ意味で、一括して保険をかけておくことをお勧めします。

本連載は、2017年3月25日刊行の書籍『管理組合・理事のためのマンション管理実務必携』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

管理組合・理事のためのマンション管理実務必携―管理組合の運営方法・税務、建物・設備の維持管理、トラブル対応

管理組合・理事のためのマンション管理実務必携―管理組合の運営方法・税務、建物・設備の維持管理、トラブル対応

大江 京子 山野井 武 佐伯 和彦 祢宜 秀之

民事法研究会

マンションに関する法律等の基礎知識はもちろん、会計・税務やコミュニティ条項、民泊など管理組合運営で気になる点をわかりやすく解説。民泊に関するモデル規約・細則も明示。

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