前回は、肩の重症度を「Yes/Noチャート」をもとに紹介しました。今回は、まだ年齢が若いにもかかわらず、肩の痛みに悩む人が増えている理由を探ります。

五十肩などの「肩の痛み」は加齢によって起こるが…

肩が痛い、腕が上がらないというと、まず思い浮かべるのが〝四十肩・五十肩〟ではないでしょうか。

 

実際に、肩の痛みを訴える人の多くが四十肩・五十肩で、その名の通り40代以降によく見られる症状です。

 

40代で発症すると四十肩、50代で発症すると五十肩というわけですが、正式には「肩関節周囲炎」といって、肩に痛みがあったり、肩関節が硬くなって正常に動かなくなる症状のうち、はっきりした診断名がつかないときの疾患群をいいます。つまり、原因がわからない肩の痛みを四十肩・五十肩と呼んでいるのです。英語ではフローズンショルダー(frozen shoulder)といい、〝凍結肩〟と訳されています。

 

実は、五十肩はすでに江戸時代からありました。1797年に編集された俗語辞典『俚言集覧』の中に、「凡そ、人五十歳ばかりの時、手、腕、骨節痛むことあり、程過ぐれば薬せずして癒ゆるものなり、俗に之を五十腕とも五十肩ともいふ。また長寿病といふ」と書かれています。

 

江戸時代の平均寿命は30~40歳といわれていますので、それからすれば五十肩を患う人はかなりの高齢者で、まさに〝長寿病〟といえたでしょう。

 

こうしたことからわかるように、五十肩は高齢になって起こる疾患とされ、現在も原因不明とはいえ、その発症には加齢によって肩関節の組織に変性が起きてくること(退行変性)と、それによって肩関節の周囲に炎症が起きることが影響していると考えられています。

 

そして、不思議なことに、ほとんどの場合で1年前後のうちには自然と治ってしまうのが特徴です。そのため、肩が痛くなると「五十肩だ、自分もそういう年になったのか」などと自己判断で納得して様子を見るようになり、そのうちに痛みも治まるので医療機関を受診する機会が少ないと思われます。

 

これによって整形外科医から見ると非常にポピュラーな疾患でありながらも患者数を把握しづらく、腰痛患者が約2800万人、膝痛患者が約2400万人といわれるような実態調査が、肩関節に関してはこれまで行われてきませんでした。したがって、肩痛患者の発症年齢や患者数などの詳細は明らかにされておらず、私たち専門医も正確には実態を把握できていないのが現状です。

「日常生活での肩の使い方」が原因!?

現に、昔は〝五十肩〟といわれた症状が、40代でも起こるために〝四十肩〟ともいわれるようになり、それが最近では30代で肩の痛みを訴える人が増えてきています。さすがに30代では、まさか自分が四十肩とは思いませんから突然の肩の激痛に不安を覚えて受診し、「四十肩です」と医師に告げられてショックを受けるのです。

 

私だけではなく多くの整形外科医が四十肩・五十肩の低年齢化を実感しており、その要因が日常生活での肩の使い方に問題があると感じています。このままでは〝三十肩〟といわれる日がくるかもしれません。

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