中国当局も経済の「レバレッジの高さ」には懸念を表明していますが、保有資産との対比で見れば、まだ制御可能な範囲と捉えているようです。

経済全体のレバレッジ上昇は疑いようのない事実

第3回、第4回で解説したように、中国の各経済主体の債務は急速に膨れ上がっており、世界銀行や国際通貨基金(IMF)はもとより、中国当局自体、経済のレバレッジの高さに懸念を表明している。

 

例えば「国家資産負債表2015」は、2007-13年、社会全体の資産総額(国家資産総額)は284.7兆元から691.3兆元に増加する一方、負債総額(資産負債表の右側liabilityで、「債務」、debtより広い概念)は118.9兆元から339.1兆元に増加、ネット資産は165.8兆元から352.2兆元に増加しているが、負債の対資産比率が41.8%から49.1%へと上昇、経済全体のレバレッジが上昇していることは疑いのない事実としている。

 

 

デフレ圧力の高まりにもかかわらず、全面的な金融緩和に慎重になる背景には、こうした懸念がある。確かに債務の膨張のスピード、経済のレバレッジの高さには注意を要するが、各部門は他方で一定の資産を保有しており、リスクの程度はそれとの相対関係でも見る必要がある。

負債をカバーするだけの優良資産を保有している!?

資産についても統一的な統計は見当たらないが、「国家資産負債表2015」などから、経済主体ごとに状況を見ると、概ね以下のようになる。

 

【政府部門】
「国家資産負債表2015」では、国有企業も含めた「中国主権(ソブリン)資産総額」というベースで、2014年末227.3兆元、負債総額は124.1兆元、純資産が103.2兆元、うち地方政府の資産108.2兆元、負債30.28兆元である。

 

主権資産総額は2000年35.9兆元から191.4兆元増加しているが、うち国有企業資産の増加126.4兆元(うち非金融国有企業資産100.2兆元)、土地資源の増加49.5兆元が著しい。一方負債は、2000年21.4兆元から102.6兆元増加、うち国有企業債務の増加55.2兆元、地方債務増加26.4兆元が8割近くを占める。

 

国家金融発展実験室は、「政府は負債を補う十分な資産を有しており、長期的に見て、ソブリン危機といったことが生じる蓋然性は小さい」としている。

 

別途、社会科学院財経戦略研究院が2015年8月に発表した「中国政府資産負債表」でも、2013年資産111.8兆元、負債56兆元(何れも国有企業を除いたベースと思われる)で、純資産が55.8兆元、2010年以降、資産に比べ負債が地方債務を中心に大きく増加しているものの(純資産の対GDP比率は2010年163%から、13年は95%へ低下)、政府は全体として、負債をカバーする十分な優良資産を保有していると結論付けている。

 

次回は、【企業部門】と【家計部門】の状況を見ていきたい。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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