前回に引き続き、「国家資産負債表2015」などのデータをもとに、中国の経済主体ごとに債務と保有資産の状況を見ていきます。今回は企業部門と家計部門がテーマです。

負債の対資産比率はやはり上昇傾向にあるが・・・

中国内の資産については統一的な統計は見当たらないが、「国家資産負債表2015」などから、経済主体ごとに状況を検証する。今回は【企業部門】と【家計部門】について見ていきたい。

 

【企業部門】
「国家資産負債表2015」によると、非金融企業部門(含む国有企業)について、保有資産は2013年、国家資産総額691.3兆元の30.3%(約209.5兆元)、金融資産全体の20.2%(現金、売掛金、株・債券等)、非金融資産全体の40.8%(固定設備や在庫等)を保有、負債の対資産比率は2007年の54%から上昇傾向にあるが、14年なお60%に止まった見込みとしている。

 

豪NZ銀行も、負債の対GDP比は大きく上昇しているものの、2013年時点、対資産比率はなお61%に止まっていると見ている。

預金だけで債務の2倍以上の資産がある家計部門

【家計部門】
家計部門の債務の中心は消費者ローンで、人民銀行統計で2014年末の消費者ローン残高は約23.1兆元にのぼる。MGI推計では14年Q2、3.8兆ドル、約23.5兆元で、ほぼこれに対応した数値になっている。他方、人民銀行統計で預金残高は14年末50.3兆元、預金だけでも、債務の2倍以上の資産がある。

 

その他、株式や住宅といった資産があるが、豪NZ銀行は一定の仮定の下で試算すると(注1)、13年末で家計保有資産総額は少なくとも136兆元にのぼるとしており、そうすると債務の対総資産比は15%程度に止まる。もちろん株、住宅は、各々株式市場、住宅市場の動向に影響を受ける点でリスク資産だが、債務に対し、全体として十分な資産を有していると言える。

 

「国家資産負債表2015」では、「居民部門」の債務が14年、GDP比36%(約23兆元)まで上昇したとしており、これはほぼ上記推計と同様、他方、保有資産は国家資産総額691.3兆元の29.4%(約203兆元)と大きい。推計の前提となる地価や株価の仮定が異なるためと思われる。
 

(注1) 株式時価総額の約30%を家計が保有すると仮定し、上海・深圳両取引所に約7.1兆元、また住宅ストックを1㎡当たり平均価格4000元で試算すると約82.4兆元の資産があると推計している。

(参考文献1) ‘Is China a Highly-Leveraged Economy?’ ANZ Research, June 2014

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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