大胆な金融緩和に動いている中国が抱える、「ネット金融の拡大」「対外債務」「政府部門資産の流動性」という3つのリスク。今回は、前回に引き続き「ネット金融の拡大」について見ていきます。

監督当局や規制がはっきりしない「ネット金融」

前回に引き続き【ネット金融の急拡大】について見ていきたい。企業部門の高レバレッジ、金融政策との関連では、以下の点に留意する必要がある。第1に、P2Pとネット小規模融資を合計しても、14年なお1兆元程度で、企業部門の債務のごく一部にすぎないが、毎年2倍、3倍といった速度で急速に膨張している。絶対水準より、その膨張速度により警戒する必要がある。

 

第2に、それにもかかわらず、管理監督体制の整備は遅れている。もともとネット金融は、開業規制、取引規制、監督当局のいずれもはっきりしない「三不管」(注1)、野放し状態にあるとされ、業界自身も「三無産品」と称するなど、大きなリスクが認識されてきた。例えば2015年6月末時点で、問題があるとされるP2P業者は786と23%を占めており、13年末275(17%)から急増している(上記、網貸之家網貸数据)。大半は詐欺商法、資金の持ち逃げだ(7月1日付一財網)。

 

 

3月全人代報告で、李首相はネット金融を「異軍突起、新しい形態の突然の出現」で「その健全な発展」が必要とし、「ネット金融プラス行動計画」策定に言及、業界では2015年がネット金融の管理監督元年になるとの見方が広がった。7月、人民銀行等関連10部局が共同で「ネット金融の健全な発展促進のための指導意見」を発出、ネット金融に関する基本的考え方を示すとともに、所管分担を再確認、これら動きが、開業・退出基準の設定や商品設計、情報開示等の面での監督細則の制定を促すことが見込まれているが、人民銀行所管のネット決済以外は動きが遅い。特に銀行監督委所管のP2Pは業者の数が多く、またその業務形態も様々なため、細則制定に手間取っているもようだ。

 

2015年9月末時点での関係者の情報によれば、監督細則は4次修正案の段階で、業務範囲、資金管理、開業資格制限等をどう規定するかが検討されている。15年中に案がパブリックコメントにかけられるかどうかというタイミングと言われている(9月21日付一財網)。

 

他方、ネット金融は、その自由さを武器に、伝統的な金融で対応できていない中小企業融資等の空白を補ってきた面があり、単に規制を強化すればよいという話ではないところに難しさがある。

 

例えば人民銀行は7月末、ネット決済についての本人確認手続き、および1日、1年当たり決済金額に上限を設ける提案をパブリックコメントに付したが(制度としてはあるが、原案通り実施されるのが通例)、銀行のネット決済サービスは規制の対象外となっており、大手国有銀行が当局に圧力をかけたのではないか、多くの新興オンライン業者を淘汰し、伝統的な銀行を保護するだけだといった批判が出ている(8月4日付Caixin Online等)。

高コスト借入への依存をどこまで解消できるか?

第3に、金融緩和政策は金利高止まりや企業の「融資難(融資が受けにくい)、融資貴(借入コストが高い)」の解消を狙っているが、大胆な金融緩和に動いても、それが十分な効果を発揮できるのか疑問が残る。

 

実際、これまでのところ、目立った刺激効果が出ていない。一義的には、過剰設備を抱える中で全体的に資金需要が弱いこと、物価基調が弱いため実質金利が下がらないことが大きいが、構造的要因も忘れるべきでない。中国でも金利の市場化はそれなりに進んでおり、資金の価格である金利も基本的には市場の需給に左右される。供給面を見ると、M2伸びは一貫して名目GDP伸びを上回り、M2残高は名目GDPの約2倍に達している。

金利高止まりは、供給不足と言うより、非効率な国有企業、また地方融資平台などが、予算を超えても容易に資金を補てんできる「軟予算約束」、緩い予算制約の下で、資金を吸収し続けている需要側の要因が大きい。このため、成長の原動力となる中小・ベンチャー企業は、通常の銀行融資から外れ、P2Pやネット小規模融資といった高コスト借入に依存している。こうした状況を改革していかなければ、さらに金融緩和をしても、その効果は限られたものになるおそれがある。
 

(注1)    「三不管」は元来、省市区3つの行政区域の境で、行政の空白になっている地域を指す表現(中国百度百科)。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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