任意調査は「自分の都合」を優先してOK
税務調査は任意調査と言われます。これは、税務調査を断れば罰則がありますので、納税者は断ることはできないけれども、国税が自分のいいように、納税者に税務調査を強要することもできない、という意味です。
任意調査の本質から考えると、税務調査は拒否できないけれども、税務調査先の事情には十分に配慮して実施すべき、ということになります。強権的な税務調査などと言われますので、このことはあまり意識されませんが、代表的な例があります。それは税務調査の日程調整(税務調査の予約)です。
通常の場合、税務調査の予約は、調査官から日程を申し出て、その後関与税理士や経営者の予定と調整するという手続きをとります。この際、調査官の希望日程よりも、必ず関与税理士や経営者の予定を優先させることになります。
犯罪捜査などの強制調査であれば、有無を言わさず調査官の都合に合わせなければなりませんが、実際の税務調査でこのような強制がなされることはありません。
私の調査官時代の経験から言うと、ある税務調査で2週間先の予定を指定したのですが、どうしてもその日程では無理なので、1か月半後にして欲しい、との申し出が税理士からありました。
1か月半も期間を開けられると、税務調査の予定が入らず仕事がなくなってしまう、という状況でしたが、統括官にその旨を報告したところ、相手の都合の通りでかまわないとの話でした。
以前立ち会った税務調査でも、先の事例と同じように、仕事の都合があってどうしても税務調査の立会いができなかったものですから、1か月半程度先の日程を税務署に指定しました。その際、「税務調査が長くなりますよ」などと嫌味を言われましたが、比較的楽に私の申し出を調査官は認めてくれました。
調査を先延ばしにしても、税務署の心証は害さない
「税務調査は相手がある話なので、自分の思い通りにはいかないもの」と税務署内ではよく言われたものです。これは、税務調査が交渉で決まる、という意味だけではなく、日程調整などについて、納税者や税理士に配慮しなければならない必要性についても言われる話です。
一般的な感覚としては、税務署の調査官は高圧的に見えるかもしれませんが、こういう意味においては、実際のところ調査官はかなり納税者に配慮しているのです。
税務調査に慣れていない方であれば、税務調査の予約があった段階で、「税務署の予定に合わせなければならない」であるとか、「あまり先に延ばしすぎると、税務署の心証が悪くなる」といった心配をなされる方も多くいます。
しかし、何らかの嫌味を言われる可能性はあるにしても、自分の都合を優先させたからといって、税務署の心証を害して直接不利益を被ることはありませんので、余裕を持って対応されることをおすすめします。
<POINT>
税務調査の日程は、税務署の予定に合わせる必要はない