調査では「承諾した行為以外」は認められない
税務調査は任意調査なので、調査の実施を拒否することは違法であるものの、可能な範囲内で協力すれば足りるものです。この協力について押さえておくべきは「承諾」というキーワードです。
調査官から、確認しようとする資料について許可を求められる場合、それに対して「承諾」をすれば、その手続きは基本的に問題がない、とされます。
調査官は税額計算等に関係ある資料であれば、チェックすることが可能ですから、求められれば「承諾」せざるを得ないことも事実ですが、このあたり税理士も調査官も甘く見る傾向があります。
たとえば、無予告で調査される場合など、とくに「承諾」を与えていないのに、調査官が会社の目を盗んで勝手に資料を見ることがありますが、「承諾」をしていない以上、それは問題がある行為となるわけで、抗議してしかるべきことです。
税理士や納税者の本音として、調査官に抗議などできない、という恐れがあるかもしれませんが、これは後々大きな問題に発展する可能性があります。と言いますのも、「承諾」には「黙示の承諾」も含まれるとされているからです。
先の例で言えば、勝手に資料を見始めた調査官に対し、明確に拒否をしないのであれば、その調査官が資料を確認することを「承諾」したと捉えられる可能性が大きいのです。つまり、明確にイエスと答える明示の承諾はもちろん、明確にノーと答えない黙示の承諾として「承諾」したと取り扱われる可能性があります。
抗議しないと法律上も「問題なし」の扱いに
ところで、私は税務調査の相談を多数受けていますが、その多くは法律に細かい規定が書かれていない「税務調査の進め方」に関することです。
法律に細かい規定が書かれていれば、それに照らして是非を判断できますが、税務調査の進め方は細かく規定されていませんので、税理士や納税者から見ればやりすぎになり、調査官から見れば問題がない、となり、往々にしてトラブルに発展します。この点、基本的には調査官が問題なしと考える合理的な手続きによっていれば、裁判所は問題がないと判断する傾向があります。
以上を踏まえると、われわれが税務調査の進め方について問題があると考えた場合には、すべからく調査官に抗議しなければならないということになります。
抗議しなければ、先の黙示の承諾によって調査官の調査を受け入れたことになる可能性がありますし、税務調査の進め方は調査官の考えによる部分が大きいわけですから、なぜ合理的な手続きとなるのか、それを税務調査の段階で明確にしてもらわなければ、後日裁判で争うことも非常に困難になるのです。
抗議しなければ受け入れた、という話になって税務調査が法律上も問題ないとされるのが税務調査の真実であるわけで、批判も多いところですが、税務署と闘う姿勢を持つことは、税務調査対策に必須なのです。
<POINT>
調査官の問題行動でも、抗議しなければ認めたことになる