前回は、街の不動産屋が「URの物件」を取り扱う理由を解説しました。今回は、「地震で倒壊しにくい物件」を見極めるポイントを紹介します。

1981年以降の「新耐震基準」で建てられた物件を選ぶ

私が子供の頃、怖いものの順番は「地震、雷、火事、親父」といわれていました。当時は、親父も地震などの災害に匹敵するほど怖かったということですが、親父の立場の変化はともかく、「地震、雷、火事」はいまだに怖いもので、やはり今でも地震が一番怖いということです。

 

とくに地震は、先日も熊本地方で震度7を観測し、甚大な被害をもたらしました。地震で建物が倒壊すると、その下敷きになって命を落とすこともあります。建物が倒壊するかしないかで、私たちの生死が分かれるのです。

 

では、どのような建物が倒壊しにくいのでしょうか。

 

そもそも日本の耐震基準は、関東大震災の翌年、1924(大正13)年に世界に先駆けて施行され、1950(昭和25)年に建築基準法として定められました。これが旧耐震基準と呼ばれるものです。

 

その後1981(昭和56)年に大きく改正されて新耐震基準が誕生しました。この改正以前にも、1971(昭和46)年には1968(昭和43)年の十勝沖地震の教訓を踏まえて鉄筋コンクリート構造建物の柱の帯筋の基準を強化するなどの改正が行われています。

 

旧耐震基準で立てられた建物と新耐震基準の建物の差は、被害の大きさと被害確率の差として表れています。阪神・淡路大震災では、旧耐震の建物は約30%が大破以上の被害を受けましたが、新耐震の建物の大破は数パーセントにとどまりました。

 

つまり、戸建ての住宅やマンションなどを購入するときには、その建物の建築年をしっかり確認するべきだということです。せめて1971年以降か、1981年の新耐震基準になってからの物件ということが重要です。

とくに注意が必要なのは「確認済証」の日付

ただ、新耐震基準をクリアしているから絶対に壊れない、ということではありません。旧耐震の頃の建物でも倒壊しないものもありますし、新耐震であっても倒壊してしまうものもあります。地震の揺れ方や揺れている時間、その建物が建っている地盤などにもよるでしょう。

 

昔の大工さんなどは職人気質で、自分が納得できるまで念入りに丁寧な仕事をするため、旧耐震の古い戸建てでも倒壊どころかほとんどダメージを受けない建物もあるそうです。

 

旧耐震だから壊れる、新耐震だから絶対に壊れない、というわけではありませんが、その判断基準として建築年は気になるものです。この建築年を見るときに、気をつけていただきたいポイントがあります。それは、「建築年月日」です。

 

新耐震基準が施行されたのは1981(昭和56)年6月1日でしたので、この日以降に建築確認を受けて確認済証を交付された建物は新耐震基準に準拠しているはずですが、5月31日以前に建築確認を受け、すでに工事に着工していた建物は必ずしも新耐震基準を満たしているとは限らないのです。

 

大規模なビルやマンションなどは、着工から竣工までに数年かかることも珍しくありませんから、完成が1982年であっても、建築確認は1981年5月31日以前の可能性もあります。つまり、募集図面や販売図面の築年数を見ても、旧耐震か新耐震かはわからないことになります。そのため、戸建ての家屋やマンションなどを購入する際には、確認済証または検査済証の有無を確認するとよいでしょう。

 

とくに確認済証の日付は重要です。もし記載がなければ登記簿謄本の表題登記をした日付から判断することもできますが、そもそも建売住宅には表題登記がありませんし、いろいろな事情から登記が遅れることもありますので、確実というわけではありません。銀行によっては、確認済証、検査済証がないと融資を受けられない場合もあるので注意しましょう。

 

法務局の所有権移転登記も、あるいは住宅ローンも、検査済証の提出は義務化されていないため、一般に検査済証への意識は薄いように思います。

 

たとえば木造2階建ては、建築基準法の「確認の特例」により、建築士による設計の場合には検査済証を省略できることになっているため、検査済証のない物件が多いようです。ただし、その建物に住み続ける場合は必要ないかもしれません。

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    本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    川嶋 謙一

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