収益事業のほとんどは企業と同じ内容
NPO法人、公益法人、社会福祉法人などの非営利団体が収益を上げようとして行う事業のほとんどは企業が行っているものと同じ内容です。例えば「レストランを繁盛させる」ノウハウは、規模の違いこそあれ、地域のコミュニティレストランであっても大手チェーン店と共通するものでしょう。そこで、事業に際しては、営利企業のノウハウから学ぶ姿勢が必要になります。
その一方で、社会的な意義を考えると、商品やサービスを営利企業よりも低価格で提供しなくてはならないケースがあるのも非営利団体の特性です。例えば、ある社会課題について啓発を目的とした「映画上映会」を行うとしたら、できるだけ多くの人たちに観てもらうために、一般の映画館より入場料を低めに設定する必要があるでしょう。
しかし、非営利団体の商品ということで、一般価格よりも割高でも購入してもらえる場合もあります。障がい者の作業所で作られたクッキーは、スーパーで売られているクッキーより値段が高かったりします。それでも、「あの子たちががんばって作ったもの」ということで購入してもらえたりします。まさに、ミッションへの共感が購入行動につながるわけです。
そこで、事業自体から収益を上げようとする際に、団体のミッションと事業の収益性の整合性が問われてきます。この「整合性」については、「ミッションとの整合性と収益性」に関する今後掲載の記事でご紹介します。
非営利団体ならではの価値、すなわち社会の課題の解決のための組織という特性を生かして、「共感」による購入やボランティアの「参加」協力を得ながら収益を上げていくことを考えなくてはなりません。キーワードは「共感」と「参加」です。このことについては、「「 共感」と「参加」で収益を上げる」に関する今後掲載の記事を参照してください。
「課題の解決につながるサービス」の購入者とは?
非営利団体が収益を上げるためには、何が「売り物=商品」となるのでしょうか。大きく5本の柱が考えられます。
1)サービスの商品化
課題の解決につながるサービスの購入者は下記の2つに分けられます。
①課題解決の対象となる当事者
ミッションに掲げている社会の課題の解決の対象となる当事者から対価を得るものです。例えば、子育て支援団体による病児保育は、子どもが病気にかかると保育園では預かってもらえないという、働く母親にとって大きな課題を解決するために生まれたサービスですが、このサービスについては、当事者である母親が託児料金を払います。また、高齢者への食事の宅配サービスなども当事者から対価を得て提供されています。
②課題解決に賛同・共感した人
コミュニティカフェやコミュニティレストランは、地域コミュニティの再生というミッションに賛同する人が集う場で、来店者はそこで提供される飲食サービスに対して対価を払います。オンライン英会話事業を通じてフィリピンの貧困問題の解決に取り組む団体の英語レッスンを受ける人は、単に安価な個人レッスンというだけではなく、その背景にあるフィリピンの若者の夢と自立を実現するミッションに共感していることが考えられます。
次回に続きます。