相談力、フォロー力、人間関係力が窮地を救う
これまでの連載で説明したように、老舗の「のれん」に助けられながら会社再建を進めてこられたわけですが、周りの人たちからは、よく精神的に潰れなかったね、と感心されました。
自分で言うのもおこがましいのですが、そこはやはり、それまでに培ってきた逆境を乗り越える力と、その力によって裏付けられた楽天的な考えが我が身を救ったと考えています。
それでは逆境を乗り越える力とはなんでしょうか。それは、相談力、フォロー力、そして人間関係力だと考えています。
これら3つの力を、できれば20代のうちに身に付けてほしいのです。と言いますのも、やはり30代以降になると、それなりに責任や立場がありますので、あまり無責任に思われる行動を取れなくなるからです。それにそのころはもはや、これらの力が試され始める時期に突入している可能性が高いですから、あまりのんびりしていてはいけないと思います。
それではまず相談力についてです。
逆境に陥ると、自分1人ではどうにもならない壁にぶつかります。そのようなとき、相談できる人、助けてくれる人がいることが重要です。あるいは、相談できる人や助けてくれる人を見つけ出すスキルが必要です。
これが相談力です。相談癖といってもよいかもしれません。
相談するということは、案外とできないものです。妙にプライドがあったり、疑い深かったりするとなおさらです。また、大きな問題を抱えてから、いきなりその大きな問題を相談できる人を見つけ出すことは難しいでしょう。
ですから、若いときから、まずは小さな問題を相談するという経験をたくさん積んでおくのです。
そのためには問題を抱えなくてはなりませんから、自分だけで解決できることばかりにチャレンジしていてはいけません。少し背伸びした問題に挑んで、自分1人では手に負えない状況にならなければなりません。
そのようなことを繰り返していると、いろいろなことを学んだり経験したりするので、自分ができることが増えてきますし、相談するスキルも高まります。また、相談できる人も増えてきます。
積極的に「自分より上の世代の人たち」と交流を
次にフォロー力についてです。
人に助けてもらえる人間になるためには、自分も人を助けられる人間でなければなりません。まずは助けてもらうことです。次に、助けてくれた人が困っているときには、自分が助けなければなりません。
人から助けられながら自分自身が成長できれば、そのスキルで誰かを助けられるようになっているはずです。
これがフォロー力です。そしてこれらの相談力とフォロー力を培ううちに身に付くのが人間関係力です。
相談力を身に付ければ、相手に助けてあげようと思わせる関係が築けます。フォロー力が身に付けば、あの人なら助けてくれるのではないか、と思われる関係が築けます。
そのような人間関係を積み重ねていくと、困難に遭った人から、あの人ならなんとかしてくれるのではないか、あるいはなんとかできる知恵を貸してくれるのではないかと頼られる関係が築かれます。
これが人間関係力です。
人間関係力が身に付けば、頼りになる後輩や部下になれますし、やがて立場が変われば信頼できる上司やリーダーになれるでしょう。
これら3つの力を20代のうちに身に付けてほしいと思いますが、そのために私が勧めていることがあります。それは、同じ世代だけで遊んだり学んだりすることは楽しいですし、居心地がよいのですが、できれば積極的に自分より上の世代の人たちとも交わる機会をつくることです。
そのことによって世界が広がりますし、いろいろなチャンスを得られる可能性も高まります。