土下座までしたが、ハシゴを外され・・・
この見出しは、誇張ではありません。本当に、土下座せざるを得ない状況に追い込まれたのです。
私は会社を再建するに当たり、自分だけでは財務上や融資に関する専門的な知識が不足しているので、コンサルタントや会計士からのアドバイスを受けながら再建計画を作成しました。
その上で金融機関に説明をしたのです。なんとか融資してください、と。
当時、借入先として5つの金融機関がありましたが、当然、当初は箸にも棒にもかかりませんでした。しかし、定期的に近況の報告を行うなどして、数年間粘り強く交渉をしてきました。
するとメインバンクであった某メガバンクから、本社ビルを売却するなりしてある程度債務を返済できたら融資を再開しますよ、という話をされました。周囲の支援もあり、なんとか資金をつないでいましたが、やはり金融の正常化は目下の課題でした。
ようやく熱意が通じたと思い、本社ビルを売却したお金とほかの資金繰りで得たお金で返済し、あと少し頑張れば提示された目標額の返済ができそうだという目鼻が付いた段階までもっていきました。
そして、約束どおりの金額まで返済しましたので融資してください、とお願いしたら、銀行側は担当者を変えて、そのような話は一切聞いていませんから、と相手にしてくれなかったのです。
これには慌てました。何しろ、ここで融資してもらえる金額を当てにして関係各所に説明をしていましたから。ところが、です。これがメインバンクの仕打ちでした。
当然ほかの銀行が怒り出してしまいます。それはそうです。メインバンクからの融資を当てにして、メインバンクに優先的に債務の返済をしたにもかかわらず融資を得られなかったのですから。資金繰りも行き詰まりましたし、他行へ返済するお金もなくなったわけです。
数年間、ギリギリで安定していた資金繰りだったのに、一気に億単位の資金が足りなくなりました。メインバンクからハシゴを外されたのです。
とあるファンドの協力により、事業性の評価獲得に成功
しかし、ここで立ち止まるわけにはいきません。
例によって、色々な方に相談しまくった結果出合ったのが、とうきょう活性化基金投資事業有限責任組合さんです。金融機関と投資銀行が母体となった中小企業支援を目的としたファンドです。
こちらが凄かったのが、過去の経緯を全て理解したうえで、会社の現状を正確に把握しようとさまざまな角度から情報を要求してきました。数字的な情報以外にも社員へのヒアリングや塗料メーカーへのヒアリングなど多岐に渡りました。
中でも驚いたのが、磯部塗装の技術的な優位性を確認するために、客先へ直接ヒアリングをしたい、と言うのです。
これについては正直なところ、かなり心理的な抵抗はあったのですが、彼らの真剣に弊社の事業性を理解しようとする姿勢に気おされる形で、対応をしました。
結果、信用と事業性の評価を勝ち取ることができ、融資に至ります。
時を同じくして、弊社を支援してくださっていた塗料ディーラーさんから紹介されたある金融機関からの融資もありました。結果、億単位の融資を得ることができ、一気に金融面の憂いがなくなります。金融機関といっても十人十色なのだと、非常に勉強になりました。
後日談ですが、ハシゴを外した銀行から再び融資の話がありました。乗り気ではなかったのですが、新しい担当者が熱心に提案してきましたし支店長も挨拶に来られましたので、融資を申請しました。ところが、本部から決裁が下りなかったという理由で断られたのです。
別のメガバンクでは一度破綻した企業には10年間貸せないという暗黙のルールがあるらしいのです。借金を完済してようが、どれだけ利益を上げてようが関係ないそうです。これでは企業の再建なんて、そもそも不可能な土壌なのでしょう。
当時、メガバンクと呼ばれる銀行とは3行とお付き合いがありましたが、いずれも似たり寄ったりの対応でした。メガバンクが悪くて、地方銀行や信用金庫がよいというわけではありませんが、少なくとも会社の現状としっかり向き合ってくれる金融機関やその担当者と付き合っていかないと、いざというときに、自分のところの債権だけ回収して後は知りません、といった事態になることを頭に入れておいてください。