今回は、「グローバリゼーション」が世界経済に及ぼす影響について見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

先進国の豊富な資金が、途上国の経済成長を促進

グローバリゼーションが進むと、一つの産業・業種が必ずしも1カ所にまとまって立地している必要はありません。生産活動を細かい工程に分け、それぞれの活動に最も適した立地条件のところで部品を作り、それらを1カ所に集めて最終組み立てを行なうほうが生産コストを下げることができます。

 

たとえばiPodというヒット商品がありました。この部品はアメリカ、日本、韓国など世界中から集められ、それらは最終的には台湾で組み立てられ、世界に出荷されました。このようにグローバリゼーションによって、生産効率を極限まで高めることができます。その結果、製品価格は安くなり、消費者は大きなメリットを受けることができます。

 

また、先進資本主義国の豊富な資金が発展途上国に投下され、その国の経済成長を促すことができる点もグローバリゼーションのメリットの一つです。一般に、発展途上国が経済発展できない理由の一つは、資本が不足しているからです。こういうものを作れば儲かるとわかっていても、それを作るための資金がありません。

 

そこで、先進資本主義諸国が、豊富な資金を発展途上国に投資すれば、発展途上国にも恩恵がもたらされます。東南アジアでは先進国の資本が大量に流れ込み、それによって最新の設備と機械が導入され、「アジアの奇跡」と呼ばれるような経済発展が実現しました。

外国資本が一気に流出すれば、通貨は大暴落

しかし、グローバリゼーションはいいことばかりではありません。負の側面もあります。たとえば、「通貨危機」と呼ばれる現象がその一つです。外国資本の流入によって経済成長したとしても、もしその外国資本が、何らかの理由で一気に国外に流出したらどうなるでしょうか。そうした悪夢が現実となったのが1997年に起きたアジア通貨危機でした。ヘッジファンドを含む外国人投資家が一斉に東南アジアから逃げ出したため、為替レートはあっという間に暴落しアジア通貨危機へと発展しました。

 

タイのバーツが急落したことをきっかけに、通貨下落はインドネシア、韓国などアジア各国に広がったのです。通貨危機は深刻な経済危機を引き起こし、インドネシアでは32年間続いたスハルト大統領が辞任に追い込まれました。アジア通貨危機は、グローバリゼーションがもたらした新しいタイプの通貨危機であるといえます。

 

こうした投機資金の動きを封じ込めるために、トービン税を導入してはどうかという意見もあります。これは、アメリカのトービン教授が1972年に提唱したもので、1回の為替取引にたとえば0.02%程度の税金をかけるというものです。そうすれば1日に何十回、何百回も取引を行なう投機筋にとっては税負担が重くなり、投機を抑え込むことができます。ト―ビン税を支持する専門家は多いのですが、多くの投資銀行や投資ファンドを抱えるアメリカの反対などで、まだ実現していません。

 

一方、サブプライム・ローン問題(2007年)もグローバリゼーションの負の側面があらわれた一例といえます。サブプライム・ローンとは、アメリカで利用されている住宅ローンの一つで、信用力が低い低所得者の人々(サブプライム層)向けの住宅ローンをいいます。いってみれば、本来融資すべきではない人々に融資をする住宅ローンです。当然、大きなリスクをともないます。

 

そこでリスクを分散させるために考え出されたのが、優良な住宅ローン債権とサブプライム・ローン債権とを組み合わせた証券を作り、それを世界中の機関投資家やヘッジファンドに売りさばくという方法でした。債券を買ったほうにとっては福袋と同じで、中身を信じて買うわけです。

 

しかし、サブプライム・ローンが焦げ付きはじめると、保有していた証券の価格が暴落し、世界中の金融機関が多額の損害を被ってしまいました。その影響で、2008年にはアメリカの大手投資証券会社リーマン・ブラザーズが破たんし(リーマン・ショック)、世界経済は「百年に一度」といわれる深刻な不況に陥りました。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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