今回は、「為替介入」と「外貨準備高」の仕組みと影響について見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

為替介入の判断は財務省、実働部隊は日銀

為替レートの乱高下を抑えるために、政府・日銀が為替相場に介入することがあります。これを為替介入といいます。変動相場制の下では、為替レートは市場にゆだねておくのが原則です。しかし、投機資金が入って為替レートの変動が行きすぎて実体経済に悪影響を及ぼす恐れがある場合、介入が行なわれます。

 

介入をするかどうかを判断する権限は財務省にあり、財務官の指示の下で日銀が実働部隊として介入を実行します。たとえば、円高・ドル安を抑える場合、まず外国為替資金特別会計で政府短期証券を発行して民間金融機関から円を借り入れ、その資金で円売り・ドル買いを行ないます。円売り・ドル買いは日本国内だけではなく、アメリカやヨーロッパにある口座なども使って秘密裏に行なわれます。

 

1日の為替取引が5兆ドル( = 600兆円)といわれ、その8~9割が投機目的とされるなかで、日銀が行なう数十億ドル程度の介入は、文字どおり「焼け石に水」ともいえますが、それでも通貨当局の意思を示すものとして、相場の流れに一定の影響を与えることはできます。

為替相場の安定には、ある程度の外貨保有が必要

購入したドルは、そのほとんどがアメリカ国債の購入に充てられ、外貨準備高に繰り入れられます。現在、外貨準備高が世界で一番多いのは中国で、日本は第2位で1兆2330億ドル保有しています(2015年)。

 

もし外貨準備高が不足すると、円が急落した場合、ドル売り・円買いで対抗することができません。1997年のアジア通貨危機の際に外貨不足に陥ったタイなどでは、結局自国通貨を守ることができず、通貨暴落の憂き目に遭いました。為替相場の安定のためには、ある程度の外貨を持っていることが必要です。

 

[図表]おもな国の外貨準備高

(資料:日本国勢図絵2015/16)
(資料:日本国勢図絵2015/16)

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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