会社を息子・娘へと継がせる割合はいまだに高い
社長である父親(母親の場合もあるであろうが、本書では「父親」として統一させていただく。同時に経営の承継者も「息子」とさせていただく)の会社に対する思いは特別である。ただ年老いたからといって、人生を捧げてきた会社を他人に渡してしまえるような人は稀であろう。
現実として、第三者への承継を選択する割合は四割に満たないのが実情である。一方で息子・娘への承継は、昔に比べて減少しているものの、依然として五割を超えている(図表1)。
[図表1] 現経営者と先代経営者の関係
受け継ぐことを決意するきっかけは「百社百様」
大学生にもなれば、自分の将来を考えないわけがなく、同時に父親の会社に改めて興味を持つ人も多い。一方、子どもがそんな年齢になれば、親もいい年齢になっていることが一般的であろう。本来は自分の体を気遣ってやらなければならない年齢にもかかわらず、無理を続けてしまうので、体を壊してしまう。そんなタイミングで後継者をどうするかを意識することになる。
あるケースでは、不況の煽りで大規模なリストラを実施した翌日、普段飲まない酒を飲んで涙していた父親を見て気持ちが揺らいだという娘さんもいた。就職活動をきっかけに父親の会社の技術力や地域貢献度の高さを知り、興味を持った息子さんもいた。きっかけは様々であり、〝百社百様〟なのだ。
内容はどうあれ、覚悟が重要である。覚悟はその後の人の振る舞いを大きく左右する。
「自信はないけど、自分が継がないとダメだろうな……本当にそうかな……」
それくらいの心配と不安とがあるほうが自然だし、普通である。
悩んだあげく、自分の意志が固まったら、父親にその旨を打ち明けよう。正道のように「親父の会社を手伝いたい」くらいの伝え方でいい。カリスマ社長であったとしても、一介の父親である。「お前には無理だ」と憎まれ口を叩かれるかもしれない。しかし、内心は嬉しいに違いない。