「感覚的な表現」を多用する会社もあるが・・・
「売上が少し落ちた」「材料がだいぶ高くなった」「もっと丁寧に仕上げる」「なるべく早くやる」。こういう感覚的な表現を会話の中で多用する会社の業務管理のレベルは、えてして高くない。同時にその会社は、コミュニケーションがうまくいっているようで、実はそうではない。
それも当然だ。「少し」「だいぶ」「もっと」「なるべく」。そういった言葉は、人によって異なる尺度を持つからだ。自分は「明日には完成しているだろう」と思っていたにもかかわらず、他の人は「今週中に終わらせるつもりでいた」、なんてこともありうる。
これは話し方のくせの問題であり、上司や先輩がそういう会話をしていると、部下や後輩もそれを真似てしまう。まずは後継者であるあなたが、意識しながら具体的な数字で話をするくせをつけなければならない。
「経営指標」を理解しながら、同業他社と比較分析
「会社のことはすべて把握しているので、細かい数字など気にしない」などとトンデモ発言をされる社長がいらっしゃる。本当にそれでよいのだろうか?
会社を体に例えてみればわかりやすいだろう。本人が感覚で大丈夫と思っていても、健康診断の結果、数値の異常が体の異変を示してくれるのだ。これに納得いただけるようであれば、自社の状況も数字でチェックしてほしい。
チェックをするには、経営指標を分析するとよい。同業他社との比較は、「TKC経営指標(BAST」(TKCグループ)や「小企業の経営指標」(日本政策金融公庫)等を参照する方法もある。同業種で上場している企業があれば、有価証券報告書等の公表情報から同じ項目の数字を拾って計算してみればよい。
業種によって見るべき指標の重要さの度合いは異なるが、一般的な視点というものがある。指標の意味を正しく理解しながら、自社と他社との違いを大まかに把握することができよう。(図表1)は大鉄鋳造の指標を鋳物業の中小企業データと比べたものであり、いろいろな点で違いを認識できるものと思う。
[図表1] 同業他社との経営指標比較
ただし、参考にしたデータの特性を知っておく必要がある。公表された統計値等は主に決算数値に基づくものであるが、世の中小企業は、決算書について何かしらの調整を行っているのが実態である。利益が出すぎれば節税対策を行うし、逆であれば利益が出ているように見せる、すなわち粉飾だ。よって可能であれば、父親からヒアリングを行って、実態を反映した貸借対照表と正常収益力を把握しておくことも重要である(図表2)。
[図表2] 実態貸借対照表と正常収益力の把握