同じ境遇にある人との会話は、不安を払拭する特効薬
カリスマ社長を父に持つ息子は、大小の差はあれ否応なしに劣等感を心に抱える。そんな心理状態では、他人からのおざなりの応援や共感は逆にうるさく感じてしまう。そのとき、唯一救われるのは、自分と同じ境遇にある人との会話である。彼らとの会話は、疑問や悩みの共有となる。それは「不安を払拭する特効薬のようなものである」とは、私が実際に聞いた声だ。
父親に相談すれば解決する疑問と、そうではない悩みが、後継者にはある。その悩みを打ち明ける相手と出会う方法はいろいろあろうかと思うが、私は何はともあれ〝後継者育成セミナー〟への参加を提案することにしている。
セミナー参加の一番の意義は「コミュニケーション」
経営に関するセミナーは古今東西無数に存在するし、受講者を後継者に限定したセミナーも同様である。中小企業大学校、商工会議所等、大学院、金融機関が提供するものなど選択肢は少なくない。基本的に経営に必要な知識を学ぶ、あるいは体験することができる内容であるが、これを第一の目的とするのではなく、「同じ境遇にある人との出会い」を最も重要な目的とするのがよいと考えている。
後継者育成セミナーに参加してもらった後、感想を聞いてみると「同じ境遇の人との出会い」については、実に二十人中一九人が利点として挙げており、「悩みの共有と相談」についても二十人中一四人が利点として挙げている(図表参照)。このことからも、後継者育成セミナーへ参加することの一番の意義は、「同じ悩みを持つ人とのコミュニケーション」にあると言ってよいだろう。
ポイントは、こういった悩みの共有や相談は、講義の最中というよりは、講義の間の休み時間や、講義終了後の食事や飲み会などの場で話されることがほとんどだという点である。あなたが人見知りであるかどうかはさておき、せっかく払ったお金と時間を無駄にしないよう、積極的に周りの人間と話をしてみよう。
[図表] 後継者育成セミナー参加の利点