数年に1度改定される「エネルギー基本計画」
前回に引き続き、エネルギー会社に共通する主な注目点を見ていきます。
(3)日本のエネルギー政策
日本のエネルギー政策が、エネルギー会社の経営に大きな影響を与えることがあります。政治、行政、司法の三つの視点から紹介します。
政治分野
日本政府のエネルギー政策の中心はエネルギー基本計画(資源エネルギー庁のホームページに載っています)です。エネルギー基本計画は、数年に1度、改定されています。直近のエネルギー基本計画は2014年4月に閣議決定されました。
日本のエネルギー政策のなかで、東日本大震災後に注目されてきたのは、電力・ガスのシステム改革(小売全面自由化など)、原子力発電所、再生可能エネルギー発電、石炭火力発電所についてです。日本政府が、これらの電源を積極的に推進していくのか、もしくは、抑制していくのかによって、電力会社への規制内容が変わります。
また、地方自治体のエネルギー政策がエネルギー会社の経営に影響を与えることもあります。特に、原子力発電所の運営は、地元の地方自治体の意向が重要視されていますので、地元の地方自治体の首長(県知事など)の政治姿勢が注目されます。
原子力発電所に関する訴訟に要注意
行政分野
多くの日本政府の規制がエネルギー会社の経営に影響を及ぼしています。
例えば、原子力規制委員会が原子力発電所の安全審査をしています。原子力規制委員会は、環境省の外局として設置されており、中立公正な立場で独立して職権を行使できる仕組みになっています。原子力規制委員会の安全審査に関する判断や安全審査に掛かる時間が、原子力発電所の稼働に大きく影響しています。
他には、電力・ガスシステム改革の制度の詳細設計やエネルギー設備を建設するときの環境アセスメントの運営(審査基準や審査期間)なども例として挙げられます。
司法分野
司法分野では、原子力発電所に関する訴訟が注目点です。2016年3月9日に大津地方裁判所(滋賀県)は、関西電力の高浜原子力発電所3号機と4号機(福井県)の再稼働禁止の仮処分命令を出しました。このため、関西電力は稼働中だった高浜原子力発電所3号機を停止しました(同4号機は稼働していませんでした)。この大津地方裁判所の仮処分については、大阪高等裁判所で審議中です(2017年1月12日現在)。