1円の円安で、年間純利益が13億円増益に!?
(2)原油・天然ガス開発生産会社の株価の見方
原油・ガス開発生産会社の株価を見る場合には、油ガス田の税率は高いため、税引き後の純利益が注目されます。純利益の主な変動要因には、『原油や天然ガスの生産量』、『販売価格』、『生産コスト』、『探鉱コスト』などが挙げられます。中期的に、原油・ガス開発生産会社の生産量と埋蔵量は増加していくことが理想的です。また、『配当金などの株主還元政策』も注目点です。
<原油価格や天然ガス価格の変動>
原油・ガス開発生産会社の業績は、原油価格や天然ガス価格の変動によって、左右されます。そして、前述したように、原油価格の変動幅が大きいため、利益への影響度合いも大きくなります。また、原油と天然ガスの販売は、米㌦決済が多いので、円/㌦・レートの為替の影響も受けます。原油・ガス開発生産事業を行っている会社は、原油価格の変動による利益への感応度を開示していることが多いです。
例えば、INPEXの2016年度の会社計画では、原油価格が1㌦/バレル上昇すると年間の純利益は29億円増益になり、為替(円/㌦)が1 円円安になると年間の純利益は13億円増益になると開示されています。なお、INPEXの2015 年度の純利益は167億円でした(2015年度平均のブレント原油価格は48.7㌦/バレル,為替120.2円/㌦)。
<原油や天然ガスの生産量>
原油や天然ガスの生産量は、中長期的に増加していくことが望ましいです。一般的に、油田やガス田の生産量は、だんだん減少していきます。このため、既存の油田やガス田については、生産量を維持もしくは増加させるための投資が必要です。中長期的に生産量が増加できるように、会社がさまざまなプロジェクトを管理していることが重要です。
原油や天然ガスの生産量が、計画外に短期的に変動することがあります。例えば、油田の事故などによる技術的なトラブルの発生や、治安悪化などの政治情勢の変化によって、油田の操業が滞るときもあります。生産量の減少は、減益要因となる可能性がありますので、注意が必要です。
高い確率で生産できる数量「確認埋蔵量」に注目
<原油と天然ガスの埋蔵量>
中長期的に、原油や天然ガスの生産量だけでなく、埋蔵量が増加し、可採年数も長くなることが原油・ガス開発生産会社の理想です。
埋蔵量とは、油田やガス田に埋蔵されている原油や天然ガスの数量のことです。埋蔵量の定義にはいくつか種類がありますが、確認埋蔵量(proved reserves)の数字がもっとも注目されます。
確認埋蔵量は、一定の経済条件と操業条件に基づいて、将来的に高い確率で生産することのできる数量のことです。確認埋蔵量の次に可能性が高い分を推定埋蔵量(probable reserves)と言います。推定埋蔵量は、経済条件や操業条件が改善すれば、確認埋蔵量に昇格する可能性があります。
可採年数とは、埋蔵量を生産量で除した数字で、その油田の生産可能な年数を示しています。一般的には、ある年度末の埋蔵量を、同じ年度の生産量で除して計算します。
INPEXの可採年数を計算してみましょう。INPEXは油田もガス田も保有しているので、以下の生産量と埋蔵量は、原油と天然ガスの合計値になります。この原油と天然ガスの合計値の単位は、バレル(原油換算)を使用しています。INPEXの決算説明会の資料では、原油の単位はバレルであり、天然ガスの単位はcf(cubic feet,立方㌳)や立方メートルが使用されています。
INPEXの2015 年度の原油と天然ガスの生産量は、日量51.4 万バレル(原油換算)です。年間の生産量は、約1.88億バレル(原油換算)(=51.4万バレル×365日)と計算されます。
INPEXの2015年度末の確認埋蔵量は32.64億バレル(原油換算)です。なお、2015年度末の推定埋蔵量は17.05億バレル(原油換算)です。したがって、確認埋蔵量と推定埋蔵量の合計は、49.70億バレル(原油換算)となります。
これらの数字から、INPEXの確認埋蔵量の可採年数は、約17年(=確認埋蔵量32.64億バレル÷年間生産量1.88億バレル)と計算されます。