LP会社は「元売業者・卸売業者・小売業者」の3種類
6.LPガス会社の株価の見方
LPガス会社の主な事業は、LPガスの卸売や小売です。主な会社は、岩谷産業(8088)、伊藤忠エネクス(8133)、日本瓦斯(ニチガス)(8174)です。
(1)LPガス会社の事業概要
<LPガスの特性>
LPガスは、液化石油ガスのことで、プロパンやブタンがあります。
LPガスの特性は、小さい圧力で液化するので、ボンベによる運搬が容易なことです。LPガスが気体から液体に変化すると、体積は250分の1に縮小します。LPガスは、液体の状態でLPガス容器に充填され、家庭や工場などの需要家に運搬されます。LPガスの供給エリアは、国土面積の約95%、2016年3月末のLPガスを使用している世帯数は約2,400万世帯です。
<LPガスの用途>
LPガスの国内需要量は1,439万t(トン)(2014年度)です。LPガスの用途別の構成比は、家庭・業務用44%、工業用21%、都市ガス用8%、自動車用7%、化学原料用19%、電力用1%です。家庭業務向けは、一般的な家庭のようにガスコンロや給湯器、暖房などに使われています。都市ガス向けでは、LNG受入基地などで都市ガスの熱量を上げるために、天然ガスにLPガスも混ぜることに使っています。工業向けは、工場の加熱やボイラーの燃料に使われます。自動車向けでは、タクシーなどLPガス自動車の燃料になっています。化学原料向けでは、エチレンやプロピレンなどの化学製品の原料として使用されています。
<LPガス会社の種類>
LPガス会社を流通段階で分けると、元売業者、卸売業者、小売業者の3種類に分けられます(図表参照)。日本LPガス協会によると、2016年3月末の会社数は、元売業者が12社、卸売業者が約1,100社、小売業者が約20,000社です。
元売業者は、LPガスを海外から輸入、または製油所でLPガスを生産して、卸売業者に供給します。製油所では、原油を熱分解すると、ガソリンなどとともに、LPガスも生産されています。
日本のLPガス輸入価格に大きな影響を与えていると言われているのが、サウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコが決めているLPガスのCP価格です。CPとは、『Contract Price』のことです。最近では、米国からのLPガスの輸入が増えている点は注目されます。
卸売業者は、石油元売業者からLPガスを調達し、小売事業者に供給しています。LPガスは、内航船やタンクローリーによって、各地の充填基地や小売事業者に輸送されています。
小売事業者は、元売業者や卸売業者からLPガスを調達し、家庭や工場などの需要家に販売をしています。一般家庭には、LPガスのボンベによって、運ばれています。
[図表]LPガスのサプサイチェーン
冬期に集中するLPガス事業の利益
(2)LPガス会社の株価の見方
LPガス会社の主な事業はLPガス販売事業です。一方で、LPガス会社の事業ポートフォリオは、さまざまです。業績を見るうえでは、まず、この2点に注目しましょう。そして、配当金などの株主還元政策にも注目です。
<LPガス販売量の増加>
LPガス会社の利益成長のためには、LPガスの販売量を増加させることやLPガスの小売(需要家への直売)を増やすことが鍵になっています。LPガス全体の販売量は頭打ちですので、LPガス販売量を増加させるためには、販売シェア拡大が必要です。販売シェアを拡大するためには、競合相手よりも、安いLPガスを提供するか、サービスなどの付加価値で勝負する必要があります。
<LPガス会社の事業ポートフォリオはさまざま>
LPガス会社の事業ポートフォリオはさまざまです。LPガス事業以外の事業の経常利益を大きく左右する場合もありますので、LPガス各社のセグメント情報をチェックしてください。
例えば、岩谷産業は、産業ガス事業(窒素や水素などを工場に供給)も主力事業です。伊藤忠エネクスは、サービスステーションの経営、発電所を保有し、発電事業も行っています。日本瓦斯(ニチガス)は都市ガス事業も行っています。
<LPガス事業の利益は冬期に集中>
LPガス事業の利益は冬期に集中しています。冬は暖房向けのLPガス需要がありますので、LPガスの需要は冬がピークになるためです。このため、3月期決算のLPガス会社ですと、下期(10〜翌年3月)の利益が多くなり、上期(4〜9月)の利益は小さくなる傾向があります。LPガス会社の上期(4〜9月)の利益が小さくても、勝負は冬のある下期ですので、ご注意ください。