今回は、販売までの流れなどを中心に、原油・ガス開発生産会社の株価の見方を解説します。※本連載は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニアアナリスト・荻野零児氏の著書、『よくわかるエネルギー株』(化学工業日報社)より一部を抜粋し、エネルギー会社の株価の基本的な見方をご紹介します。

油田の寿命は数年~数十年と幅広い

4.原油・ガス開発生産会社の株価の見方

 

原油・ガス開発生産会社(上流会社)は、海外での油田やガス田で、原油や天然ガスを生産している会社です。主な会社は、国際石油開発帝石(INPEX)(1605)や石油資源開発(1662)です。

 

(1)原油・ガス開発生産の事業概要

 

図表は、油田やガス田の鉱区権益の取得から生産までのプロジェクトの流れを示しています。一番最初の鉱区権益の取得から解説していますが、実際には、プロジェクトに参加することもありますし、掘削の失敗などにより途中で頓挫する場合もあります。

 

[図表]原油・天然ガスの開発の流れ

出所:石油鉱業連盟資料に基づきMUMSS作成。
出所:石油鉱業連盟資料に基づきMUMSS作成。
 

プロジェクトの主導的な役割を果たしている会社をオペレーターと言います。一般的に、オペレーターはプロジェクトへの出資比率がもっとも高く、プロジェクトの設備投資の最終決定などの意思決定で主導的な役割を果たします。INPEXの豪州のイクシスLNGプロジェクトは、INPEXのオペレーター案件として、鉱区権益の取得から行っています。

 

油田やガス田は、生産井と呼ばれる井戸から原油や天然ガスをくみ上げています。長期的な原油や天然ガスの生産量の合計は、地下にある埋蔵量と生産方法によって異なります。油田が生産できる寿命は、数年間から数十年と幅広いです。

陸上油田の開発生産のプロセスとは?

以下では、陸上油田の開発生産プロセスの一例を紹介します。

 

<鉱区権益の取得>

 

原油が噴出しそうな地域(鉱区)について、現地の政府から原油や天然ガスを開発・生産する許可(権益)を取得する必要があります。鉱区の権益の仕組みは、国によって異なっており、権益に付随する条件はプロジェクトによって異なります。

 

<探鉱>

 

権益を取得した鉱区で、油田の有無やその位置(深さ)などの可能性について調査を行います。一般的には、地表などの地質調査を行い、その後に三次元地震探査などの物理探査を行います。三次元地震探査とは、人工的に地震をおこし、地震波を分析して地下の地質構造を調べる探査方法です。そして、具体的な場所や深さを決めて、井戸を試し掘りします。試し掘りの井戸のことを試掘井と言います。

 

<採算性検討>

 

油田の埋蔵量を推定し、原油生産量の見通しや投資額などを検討します。採算性があると判断すれば、投資を決定することになります。この投資決定を、最終投資決定(FID)と呼ぶことがあります。

 

<開発>

 

原油を生産するための井戸(生産井)を掘削して、生産設備(パイプラインやプラント)を建設します。生産井の本数は、プロジェクトによって異なります。また、深く掘るほど、生産井の掘削コストは高くなります。

 

<生産・販売>

 

生産した原油は、パイプラインを通じて、輸送されます。油田のプラントでは、原油から水分や不純物などを取り除いています。そして、パイプラインや原油タンカーによって、原油が出荷されます。

よくわかるエネルギー株 業界の特長から主要銘柄の見方まで

よくわかるエネルギー株 業界の特長から主要銘柄の見方まで

荻野 零児

化学工業日報社

本書は、エネルギー(石油・電気・都市ガス・LPガスなど)業界のアナリストとして長年活躍されている三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荻野零児氏がエネルギー業界に興味のある初心者から一般投資家へ向けて、エネルギー会社…

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