ベルギー、オランダはカカオ流通の「中継点」
前回の続きです。
ベルギーは、国の南北でオランダ語圏とフランス語圏に分かれます。かつて王国はアフリカに「コンゴ植民地」(現在のコンゴ民主共和国)を有し、現地で産出するダイヤモンドの加工で栄えました。人口1,130万人(2013年)の小国ですが、カカオ豆の輸入量で世界3位、輸出量で世界8位になっています。
また、オランダの人口は1,680万人(2013年)ですが、カカオ豆の輸出量、輸出額で第5位、カカオバター(チョコレートの直接の原材料)の輸出額で世界1位です。これらの国々は、世界のカカオの中継点として機能していると考えられます。
[図表1]カカオ豆の輸出入量(2011年)
つまり、アフリカや東南アジア、南米などの産地からカカオ豆を輸入して選別・ランク付けし、各会社のブランドをつけて再輸出したり、カカオバターとして加工し、付加価値をつけた上で消費国に卸すのです。イギリスにおけるお茶(紅茶)や、イスラエルにおけるダイヤモンドにも同じような現象が見られます。
原料品をそのまま輸出するよりも、付加価値をつけて加工品として輸出した方がより利益が上がります。逆の見方をすれば、原産地の国から原料品をできる限り安く仕入れた方が、加工国の利ざやは大きくなります。
流通機構や仲介の手数料で減っていく「生産者のお金」
図表2の輸出額を図表1の輸出量で割ってみましょう。コートジボワールから輸出されるカカオは、1kgあたり2.8ドル(約300円)で取引されていますが、ベルギーから輸出されるカカオは1kgあたり3.6ドル(約385円)、オランダ産のカカオバターは1kgあたり3ドル(約320円)です。
[図表2]カカオ豆の輸出額とカカオバターの輸出額(2011年)
なお、これは輸出金額なので、港までの輸送費や倉庫での保管料などを引いていくと、実際にカカオを生産している農民が受け取る額はさらに少ないものになります。
生産者と消費者が直接つながることで、複雑な流通機構や仲介の手数料を省き、生産者の取り分を増やす「フェアトレード」の動きが活発化しています。日本でも、大手流通チェーンがコーヒー豆やカカオ、バナナなどでフェアトレード商品を扱うようになっています。
「ベルギー産」「フランス産」高級チョコレートもいいですが、その後ろにある「真の産地」にも思いを馳せてみたいところです。