中国の存在が際立つ近年の自動車業界
世界の工業に関する統計を年次ごとに追ってみると、各産業の「選択と集中」を地図上で示すことができます。自動車の生産国の移り変わりを見てみましょう。
図表1は、2001年の国別自動車生産台数を表したものです。世界一の生産国は日本で、年間生産台数は約811万台でした。次いでドイツ(530万台)、アメリカ(487万台)と続きます。
[図表1]自動車の生産国と生産台数 2001年
2005年(図表2)になると、1位の日本の生産台数が901万台、ドイツが535万台と生産台数を伸ばしますが、アメリカは432万台と、生産台数を50万台以上減らしました。2013年の統計では、日本は818万台(2位)と生産台数を落としている一方で、中国が日本を抜き去り、1808万台を生産しました。地図で見ると、自動車業界の中での中国の存在が際立ってきていることがわかります(図表3)。
[図表2]自動車の生産国と生産台数 2005年
[図表3]自動車の生産国と生産台数 2013年
各メーカーの本国で進む「マザー工場」化とは?
図表4は、2005~2013年の生産台数増減の比較です。日本やアメリカ、ドイツ・フランス・イタリアなどの西ヨーロッパ諸国で生産台数が軒並み減っているのに対し、中国やインド、東欧や中南米諸国で生産台数が伸びています(図表5)。
[図表4]自動車の生産台数の増減 2005~2013年
[図表5]自動車の生産台数の増減率(%)2005~2013年
ヨーロッパを拡大してみると(図表6)、各メーカーが本社を置く国と、古くからのECおよびEU加盟国が軒並み生産台数を落としています。1986年にECに加盟したスペイン、ポルトガル、2004年にEUに加盟し、ドイツメーカーの生産基地として注目されたポーランドが台数を減らしている一方で、スロバキア(2009年EU加盟)、ルーマニア(2007年EU加盟)は、自動車の生産台数を大きく伸ばしています。
海外生産が伸び、商品のラインナップが増えていく中で、各メーカーの本国の工場では、技術開発と大量生産のためのノウハウを蓄積・伝達を進める「マザー工場」化が進んでいます。国境を越えた企業のネットワークの中で、中枢を担う機能をどのように維持し、次の人材を育てていくか、自動車業界は極めて難しい問題を抱えていると言えます。
[図表6]ヨーロッパ各国の自動車生産台数の増減率 2005~2013年