今回は、カカオ豆を例に旧植民地と宗主国の経済的な結びつきについて解説します。※本連載は、静岡県立高校教諭で、日本地図学会所属の伊藤智章氏の著書、『地図化すると世の中が見えてくる』(ベレ出版)の中から一部を抜粋し、情報の「地図化」の有用性や具体的な事例をご紹介します。

「作物の輸出国であり、輸入国でもある国」とは?

プランテーション作物の統計を見ていると、輸出国と輸入国の両方にランクインしている国があります。これは、旧植民地と宗主国の経済的な結びつきにより、原料産地と加工地が明確に分かれている作物に見られます。カカオ豆を例に、統計を地図にしてみました。

 

図表1は、カカオ豆の輸出国を示した地図です。アフリカのギニア湾岸、東南アジア、南米諸国と赤道直下に輸出国が多く見られますが、ヨーロッパにも輸出国があります。一方、カカオ豆の輸入国の分布図を見ると、ヨーロッパ諸国、アメリカ、日本など北半球の国々に集中しています(図表2)。

 

ここで重要なのは、ヨーロッパには、カカオ豆の輸出でも輸入でも上位に名を連ねる国があるという点です。

 

[図表1]カカオ豆の輸出国(2011年)

 

[図表2]カカオ豆の輸入国(2011年)

カカオ豆の輸入国として連なる「旧宗主国」

カカオ豆の輸出国の上位10カ国を見てみましょう(図表3)。

 

[図表3]カカオ豆の輸出入量(2011年)

〈FAO STAT より作成〉
〈FAO STAT より作成〉

 

輸出量第1位のコートジボワールは、ギニア湾岸のかつてフランスの植民地だった国です。国名はフランス語で「象牙の海岸」を意味し、公用語はフランス語です。ガーナはコートジボワールの東隣の国、ナイジェリアも隣接し、ともにイギリスの植民地から独立した国で、公用語は英語です。

 

インドネシアはかつてのオランダの植民地で、カメルーンはドイツの植民地だった場所です。カカオ豆の輸入国には、これらの旧宗主国が上位に並びます。

 

マレーシアが輸入国の上位に来ていますが、かつてイギリスの植民地だったことに加え、産地のインドネシアに近く、またアジアの大消費地を抱えていることから、食品加工貿易が成り立っていると考えられます。

本連載は、2016年9月25日刊行の書籍『地図化すると世の中が見えてくる』から抜粋したものです。その後の統計情報等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地図化すると世の中が見えてくる

地図化すると世の中が見えてくる

伊藤 智章

ベレ出版

世の中には様々な情報が溢れていますが、これらを地図上に落とし込んでみると、いろんなことが「目に見えて」わかるようになるのではないかと試みました。 本書では自然環境・産業・資源・エネルギー・生活と文化・人口の様々…

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