「電照菊」の産地は毎月移動している!?
愛知県を中心とした東海地方では、ビニールハウスに電灯をつけて栽培する「電照菊」作りが盛んです。まだ寒く、日照時間が短い春先にハウスで暖め、日が暮れたら電気をつけて、あたかも夏が来たかのような環境を整えると、菊は真夏に花を咲かせます。
逆に、夏にハウスに覆いをして早めに日を遮り、苗を冷やした後に、秋から冬にかけて電灯を当てれば菊は遅咲きになります。1年中需要がある花ですので、日本全国で栽培されており、月ごとの出荷額を地図にすると、産地の移動を見ることができます(図表1)。
[図表1]菊花の都道府県別出荷額(2010年)
近年、電照菊の栽培で愛知県に迫る勢いで伸びているのが沖縄県です。かつては一面のサトウキビ畑だった那覇空港周辺は、パイナップル畑を経て、今は電照菊のハウスが集中しています(夜間の離発着の際に外を見るととてもきれいです)。
出荷本数で見れば、産地ごとの「出荷戦略」まで判明
年間出荷量(東京市場向け)では、愛知県9,128万本(1位)、沖縄県4,400万本(2位)、出荷額では愛知県67億円(1位)、沖縄県17.6億円(2位)と差がありますが、月別の出荷額を地図にしてみると、お彼岸の3月には、出荷本数、出荷額ともに沖縄県が愛知県を上回っています。
月別の出荷量を見てみると、年間を通じて安定供給している愛知県とは違い、沖縄県の菊は3月と12月に集中して出荷されていることがわかります(図表2)。
[図表2]菊花の都道府県別出荷本数(2010年)
愛知県に比べると、沖縄県は航空運賃など輸送費がかかる分、割高になりますが、冬の暖房費は安く抑えることができます。菊花の需要が高まり、端境期を狙って集中的に出荷することで産地の競争力を維持しているのでしょう。同じような戦略は、規模こそ違いますが、夏から秋の東北地方の産地にも見ることができます。
最近は、台湾やタイ、マレーシア、ベトナムなどで栽培された菊が輸入されています。人件費だけでなく、電気代の安さも競争力の源にしていると思われます。