スクール存亡の危機に直面 ふと抱いた疑問とは?
ひとりでも多くの子どもたちが、その子らしく輝くサポートをしたい
2011年にメンタルコーチとして独立した私は、こんな願いを持って”しつもんメンタルトレーニング”を開業しました。
それからさかのぼること数年前。大手スポーツメーカーに勤務していた私は、自身もプレーしてきたサッカーに携わるチャンスを得ました。元日本代表選手をメインコーチとしたサッカースクールが夢の第一歩でした。仕事をはじめた当初は、大好きなサッカーに関わる仕事ができることに浮かれていましたが、指導の現場で子どもたちと向き合えば向き合うほど「自分にはなにかが足りない」と思うようになりました。
子どもたちにサッカーを指導するために、技術的なことや練習方法などについてたくさん学び、子どもたちに「もっとサッカーを教えてあげたい」と意気込んでいたのですが、あるとき私は自分が大きな勘違いをしていることに気がつくのです。
「このままじゃやばいよ」
スクールに携わるようになってから、2〜3年が経つと、スクール生が会社の見込みほどは増えなくなりました。やがて増えるどころか目に見えて減っていき、スクールの支配人から、スタッフに危機感を煽るような言葉も増えていきました。スタッフルームにはスクール生の在籍数が貼り出され、その数字が減っていく緊張感もありました。
そのとき副支配人という立場になっていた私は、なんとかスクール生の数を増やそうと駅前でビラを配ったり、ポスターを貼ったり、ポスティングをして宣伝に務めました。
「こんなに良い指導者がいて、施設があって、なぜ人が来ないんだろう?」
スクール存亡の危機に直面し、必死でビラを配っていたとき、私はふとこんな疑問を抱きました。
「質問」をすることでやる気と能力を引き出す
「良い指導者ってなんだろう?」
その頃の私は良い指導者がいればスクール生は自然と集まってくると思っていました。たしかにそうなのですが、そのとき考えていた「良い指導者」というのは、簡単に言えば、サッカーのうまい指導者。私にとってスポーツの指導者、コーチとは「子どもたちよりそのスポーツがうまくて、技術を教えられる人」に過ぎませんでした。
そんなときに出会ったのが『魔法の質問』主宰者で、”質問家”である松田充弘(マツダミヒロ)さんでした。
対象に「質問」をすることでやる気と能力を引き出す。この考え方は当時の私に大きな気づきを与えてくれました。考えてみれば、身近にいる優れた指導者、コーチはみな、子どもたちに一方的に技術を教えるのではなく、会話を重ねることで自発的なやる気を引き出していたのです。
それからはスクールに通うスクール生のためにイチから勉強のやり直しです。スポーツの技術だけでなく、コミュニケーションスキル、心理学、ビジネスコーチングなどさまざまな分野の情報に接し、ついには大きなきっかけを与えてくれたマツダミヒロさんの”カバン持ち”として、弟子入りさせてもらうことになったのです。
それからは、指導やコーチングに対する考えが大きく変わりました。
コーチとは「その人が行きたいところに行く手助けをする」サポーターであること。そのためには質問をしてその人の心や考えを知らなければいけないこと。結局答えはコーチング対象(スポーツの場合なら選手)の中にしかないという気づきは、私の指導のあり方を一変させるものでした。