建物の企画段階で販売される「プレビルド物件」
今、海外不動産投資といえば、先進国よりも途上国を思い浮かべる人の方が多いかもしれません。フィリピン、マレーシア、インドネシアといった東南アジアの国々の不動産投資が盛んです。これから人口が増えて、経済発展する国ということで、キャピタルゲインが大きく見込めるようなイメージがあります。
人が増えて需要が高まり、不動産価値も上がっていく――そういう売り文句でいながら、あまりそれが果たされていない現実もあります。
海外不動産で失敗している人も少なくありません。おそらく買い方に問題があるのでしょう。仲介業者がいい加減だったり、騙す気がなくても知識と経験不足から投資家に不利益が当たるケースもあります。
海外不動産投資の失敗というのは、例えば「プレビルド」といわれる、建物の企画段階で販売される物件で多くあります。数年かけて建てて、竣工後に売れば儲かるという話を聞いて投資したのに、実際に建ったときには大して儲からなかったというケースです。
完成間際の一斉売却の動きで、価格が暴落した例も
実際に最近あったケースで衝撃だったのは、フィリピンのマカティーというところに、何百という世帯数の大規模コンドミニアムが建つという話がありました。
そこは数年前、私も実際に見に行ったのですが、「需要と供給のところは大丈夫かな?」と思いました。正確な戸数は失念しましたが、とにかく世帯数が多い物件でした。
単身者向けですが、海外の駐在員をはじめ、フィリピンの現地の人も3~4人で入居する需要があるから大丈夫だという話だったのですが、私は買いませんでした。
そのとき話されたスキームでは、プレビルドで物件の購入代金を月々払っていき、大体3年後から4年後に完成した時点で、その残りの部分を一括で払わなければいけません。
プレビルドの段階では完成時よりも安く買えて、その後は年々3%、4%と価格が上がっていくのです。そのため、3年後に完成する前に、残りのお金を払う前に、転売してしまいましょうというような内容だったのです。
そのような説明を受けた日本人がたくさん買っていたのです。実際に何が起こったかというと、完成間際で、みんなが売りに出してしまったので価格が暴落しました。最終的には、デベロッパーが出している、他のまだ決まってない部屋よりも下がるという逆転現象が起きてしまったのです。需要と供給のバランスが崩れてしまったケースです。
結局売れなくて、でも最後の代金を払えないという方も多い中で、出口を迎えなくてはいけないわけです。結局、かなり値下げして売ったようです。
この問題の業者は、また違う投資家向けに買い取りファンドをつくったのです。またそこで手数料を取って、損をした投資家から安く買い叩いて転売しています。
これは日本人業者が日本人投資家に対してしていることです。結局、最初に買った投資家が一番損をしています。安く叩いて買えた方は若干いいかもしれませんが、結局一番儲かっているのは仲介をしている業者です。これを犯罪かといえば、難しい問題です。投資は自己責任ですから、確証のない美味しい話に飛びついた投資家にも責任があるのです。
為替の変動で支払い額が上昇!?
また、プレビルド物件では、月々払っていく際には外貨で払っていくので、為替の変動によって支払うべき値段が変わります。為替の影響で月々の支払いが急に跳ね上がり、払えなくなってしまった投資家もいるようです。
月々5万円払えばよかったものが、月々7万~8万円になる。それで売ろうとしても、やはり売れません。
表向きのデベロッパー価格では値段が上がっているのですが、これは定価のようなもので実勢価格ではない、つまりその価格では買う人がいないのです。結局、儲かるどころか損切りのような形でしか売れずに揉めています。
普通に考えれば、完成したときに転売目的で売る人が多いわけですから、売り物の数が出てくるということです。需要と供給の問題で、必要な数より多く商品があれば、値段が下がるのは当たり前です。起こるべくして起こった失敗だと思います。
これはフィリピンだけでなく海外で多いのですが、賃貸の部屋は家具家電付きで貸すことが一般的です。購入後そのままでは貸せないので、賃貸に出すため、商品化するためにはある程度手を加えなくてはいけません。
やはり、そのためには客付会社や管理会社が必要なのですが、デベロッパーや売買仲介の業者は、そこまでネットワークを持っていません。まさに売ったら終わりです。
日本の場合は新築であれば、デペロッパーが客付けまで面倒を見ることが多いですし、管理会社も多いですから自分で選んで頼むことができますが、海外の場合ですとワンストップで依頼できる会社が少ないのです。