「ニセモノ」が文化的な創造性を発揮することも!?
「ニセモノ」と「ホンモノ」とは、実は非常に微妙な関係性の上に成り立っており、「明と暗」「黒と白」といった単純な二項対立的な論では説明不可能な場合が多い。
たとえば、博物館において制作される研究目的の「ニセモノ」は、「ホンモノ」よりもむしろ研究価値が高い場合がある。また「ニセモノ」も歴史的にみると、ある時代の社会には、生きていくために必要欠くべからざる重要な道具になりうることもある。さらに「ニセモノ」が「ホンモノ」を乗り越え、文化的な創造性を発揮することもあるのだ。
骨董品を鑑定する番組が人気だが・・・
ニセモノは、歴史のなかでどのような役割を担ってきたのだろうか。
テレビで放送されている、骨董品を鑑定する番組は人気だ。ニセモノだと鑑定されれば、番組を見る側はニセモノをつかまされるなんて、と、ちょっと優越感に浸れる。ホンモノが見つかれば、羨望と驚きを味わえる。しかし現実のニセモノの世界は、もう少し複雑だ。
ニセモノの書画は、見栄と宴会の世界で活躍していた装置であり、しかも必要欠くべからざるものだった。見方を少し変えることによって、時にはホンモノより価値があるニセモノも存在することを指摘してみたい。