開業資金は早い段階から準備し、蓄えることが重要
本連載では、開業に向けた具体的な準備についてお話ししていきます。
まずは、職場の外で個人的に行うことになる活動についてです。個人的に準備することといえば、筆頭に挙げられるのは資金準備です。これはかなり早い段階でスタートさせ、できるだけ多くを蓄えていかなければなりません。
そのためには、勤務先をあえて実家の近所で探して、住居費を浮かせながら貯蓄に励んだり、配偶者がいるならば、できるだけ協力してもらい、夫婦でガンガン働いて貯めるくらいの心構えを持ちたいところです。
おすすめは、毎月定期積み立てをすることです。給料日に定額を自動的に積み立てる仕組みをつくって、その残金で生活するようにしましょう。そうすれば、ついお金を使いすぎてしまうせいで、開業資金が貯められない・・・という事態を回避しやすくなります。
稀に「効率的に資金を殖やすため、運用でもしたほうがいいでしょうか?」という方がいますが、それは必ずしもよい方法とはいえません。株式や投資信託といった元本割れリスクがある商品、それに、外貨預金などの為替リスクがある商品の場合、いくら利回りがよいといっても、開業資金が必要になった時点で利益が出ている(もしくは元本を維持している)保証がないからです。
もちろん、開業資金以外の部分(小遣いの部分)で投資をするのは何ら問題ありませんが、開業資金に関しては堅実な姿勢を崩さず、リスクのない日本円の定期預金などで準備していきましょう。
開業には「やることが山積み」と覚悟して準備を
お金を貯めつつ、勤務医として修業を積んでいく間に、どこかで自ら開業のタイミングを決め、資金を準備することをおすすめします。目標時期を設定しないと、資金を貯めるのも遅くなります。急によい物件が見つかり、必要に迫られて準備不足のまま開業することにもなりかねません。
あまり勤務医時代を長引かせず、ほどほどのところ――30歳前半あたりまでに開業するのがベターといえます。誰しも「よし、開業しよう」と決心したら、すぐにでも開業したくなるものですが、決めてから1~2カ月で開業するのは、まず不可能です。実際に開業するまでには、年単位で時間がかかることもしばしばです。そのため、30歳前半が理想的な開業のタイミングと考えるなら、28歳くらいから少しずつ開業の準備として具体的に動き始めるとよいでしょう。
なぜ、そんなに開業までに時間がかかるかといえば、テナント開業の場合、第一に物件が見つからないからです。見つかってからも、賃貸契約、医療機器の選定、内装の設計打ち合わせ、それに工事などなど、やることが山積みで、あっという間に時が過ぎてしまいます。
やることが多いといっても、勤務医の場合、仕事のある日は忙しいので、休診日を利用して準備していくことになります。休診日くらい休みたいところですが、開業までは二足のわらじで、より多忙になるのは必至です。この準備が開業後の命運を握るわけですから、多忙は覚悟のうえで取り組みましょう。