前回は、有人店舗が今後主流になるのか、コインランドリー業界のこれからについて紹介しました。今回は、個人経営のコインランドリーを待ち受ける厳しい未来について見ていきます。

大型有人店舗による無人店舗淘汰の可能性

すでに日本にはご本家のアメリカを上回る勢いでコインランドリーが普及しています。人口当たりの数はアメリカが9000人に1店に対して、日本は6700人に1店とアメリカをこえています。数自体はまだまだ増えると思いますが、あるところをこえると減りはじめるというシナリオはすでに紹介しました。その減少のきっかけが、有人店による無人店の淘汰ではないかと私は考えています。

 

このシナリオは現在すでにコインランドリーを開業している個人オーナーにとっては、行政が有人化を義務づけるというシナリオより、むしろ脅威かもしれません。なぜなら行政によってこうしたことが義務づけられる際には、既存の業者には猶予期間が与えられたりするのが通常ですから、その間に手が打てます。また法令で有人化が義務づけられたのをきっかけにコインランドリーを廃業し、別の商売をはじめるという決断もできるでしょう。

 

ところが、大型の有人店が近隣にできて、そのサービスが人気になり、自分が経営する無人のコインランドリーがじわじわと売り上げが落ちていくというパターンは、どこで踏ん切りをつけたらいいのか判断が難しく、傷を深くしてしまう畏れがあるからです。

すでに海外では「コインランドリー」は立派な事業

ところでコインランドリーはテレビのニュースなどで、けっこう取り上げてくれていて、いつもありがたいと思っています。ただ世界と日本ではコインランドリーというビジネスのとらえ方が、かなり違うような気がしています。

 

以前タイに行ったとき、たまたま体調を崩してホテルの自室で1人だけ休んでいました。やることがないので仕方なくテレビを見ていると、トヨタ自動車がアメリカで不祥事をおこし、豊田社長がしきりに謝っている映像が流れました。トヨタもたいへんだなと思ってみていると、次に日本ではコインランドリーが頑張っていますというニュースが流れてびっくりしました。弊社が当時展開していた「洗い屋本舗」が取り上げられていたのです。

 

日本だとテレビのニュースでコインランドリーを扱う際は、たいてい「こんな新しいサービスがはじまった」とか「花粉の時期になって布団を洗う人がふえた」とか、社会の一面を切り取ったトピックスという感じがほとんどです。ところがこのニュースもそうでしたが、海外ではビジネスのひとつとしてコインランドリーを取り上げることがあたり前になっています。

 

日本のランドリー機器メーカーが東京・八王子に本社を置く企業と組んでコインランドリー・チェーンをつくり、全国展開を計っているといった純粋なビジネスねたのニュースが流れるのを見て、海外と日本国内では、コインランドリーについての認識もかなり違うと改めて感じました。海外では、やっぱりコインランドリーは大きな企業が従業員をきちんと配置して行う事業なのです。したがってコインランドリーの大きさや形態も従業員を置いてペイする規模にしないと事業として成り立たないわけです。

 

たとえばこの間、ハワイにいってコインランドリーを見てきたのですが、大きさはちょっとした体育館の半分ぐらいあって、そこには洗濯機や乾燥機が100台ぐらいずらっとならんでいました。もちろんそこには広い駐車場があって、お客様はみんなクルマに洗濯ものをめいっぱいに積んで集まってきます。そして洗濯機にもってきた洗濯ものを入れると、ちょっと広めの待合いコーナーでくつろいだり、近くのショッピングセンターに買い物に出かけたりします。ここまで大きくなくてもいいと思いますが、ある程度規模の大きなコインランドリーじゃないとお客様も来ないし、事業としても成り立たないでしょう。

 

つまり個人経営のコインランドリーの時代は終わって、これからは事業としてのコインランドリーの時代がくるのではないか。それが私の3つめの問題提起です。

手堅く・長期的な利益を得る コインランドリービジネス新常識

手堅く・長期的な利益を得る コインランドリービジネス新常識

鈴木 國夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「ローリスク・ハイリターン」な投資先として近年注目を集めるコインランドリー。しかし実際のところ、コインランドリーは本当に儲かるビジネスなのか? 本書では、業界に携わって37年のベテラン社長が、業界の歴史から最近の…

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