「有人営業」があたり前のアメリカでは…
コインランドリーが無人で営業できるのは、たまたま法令のすき間にコインランドリーが位置づけられることになったためで、少し事情が変わっていれば、クリーニング法が厳しく準用されて、もっと以前に有人化が義務づけられていても不思議はなかったと思います。
今でもコインランドリーを営業する際に保健所への届出を義務づけている法的な根拠は、このクリーニング法です。クリーニング法では、クリーニング店にはクリーニング師の資格をもった人員を配置して衛生面を含めた管理責任をもたせるように義務づけています。厚生労働省や保健所など、コインランドリーを管轄する役所は、そもそもコインランドリーとは呼ばず、コインオペレーションクリーニングという呼称を採用しています。ここからもコインランドリーはクリーニングの一種ととらえていることがわかるでしょう。
ではコインランドリーが有人化されるというのは、実際にどんなイメージになるのでしょうか。
有人があたり前のアメリカでは、洗濯ものをもってお店にいくと、まずスタッフが飛んできて機械の使い方を丁寧に教えてくれます。大型店が主流のアメリカではちょっとした体育館ほどの広さの店舗に100台をこえる洗濯機や乾燥機がならんでいるところもあるので、大きさや機能もいろいろです。ですから、こうしたスタッフの説明は、非常に役にたちます。
定期的にこれらの洗濯機や乾燥機をチェックし、放置したままの洗濯ものがないか、洗濯機や乾燥機の内部が汚れていないかなどを確認するのも、スタッフの重要な仕事です。放置された洗濯ものがあれば一定期間保管しておきます。また汚れた機器はもちろんですが、定期的に機器の内部を消毒し、衛生面での安全性を確保するのも重要な仕事なのです。また店内の清掃や不審者のチェックなど警備の仕事も任されているようです。
常勤の従業員を雇えば20万円近い人件費が必要に
そして日本のコインランドリーと決定的に違うのは、アメリカではコインランドリーを実際に出店しているのは、ほとんどGEとかワールプールとか洗濯機や乾燥機をつくっているメーカーの子会社だということです。
日本のように個人がコインランドリーを1軒だけもって営業しているというようなことはありません。中にはメーカーからは独立した会社がコインランドリーを多数経営しているケースはあります。そういうオペレーターと呼ばれる業者も、ほとんどが株式を上場しているような大きな会社です。したがってコインランドリーの現場で働いているのも、こうした会社の社員ということになります。日本のコインランドリーのオーナーが自分のお店の近くに住む主婦に1日1000円で朝晩掃除してもらっているのとはわけが違うのです。
先に触れたように、もしコインランドリーの営業にスタッフの常駐が義務づけられたらどうなるでしょうか。
最低賃金の全国平均に近い時給800円としても1日8時間雇えば1日で6400円、月に30日コインランドリーを稼働すると19万2000円の人件費がかかることになります。クリーニング店でもクリーニング師の資格を持った職人さんを1人雇えば月に30万円はかかるといわれていますから、常勤で働く人を1人雇う経費としてはでたらめな数字とはいえないと思います。
このように、あくまで想定ですが、もしコインランドリーに有人化が義務づけられたら、高利回りの投資どころではなくなるのではないでしょうか。
つまり有人化によって、コインランドリーは将来ローリスク・ハイリターンの投資対象ではなくなるのではないか。というのが私の第2の問題提起です。