前回は、肩関節の基本的な動作で使われる筋肉について取り上げました。今回は、日常生活にも支障をきたす「肩の痛み」が起こるメカニズムを見ていきます。

炎症による充血で「痛み」が発生

肩の構造を理解していただいたところで、皆さんを悩ませている痛みについて触れておきましょう。

 

痛みは実につらいもので、肩が痛いと腕を動かすことができなくなり、日常生活にも支障をきたすばかりか、気持ちまで滅入って何をやるにも億劫になってしまいます。ですから早く取り去りたいものです。

 

四十肩・五十肩の発症メカニズムはわかっていませんが、何らかの原因で肩の周囲に炎症が起こって充血し、痛みを生じさせているのは確かです。

 

炎症が起こっている肩周囲には、免疫に関わるたくさんの細胞が集まっています。免疫は、その名の通り「病を免れる」ように病原体から体を守る役目を担っています。四十肩・五十肩の場合は、病原体が原因で起こる疾患ではありませんが、炎症が起きているところには異変を察知した免疫細胞が集まっており、治そうと働いています。

炎症は治癒の過程で起こる「防御反応」の一種

この免疫に関わる細胞にはいろいろな種類があり、それぞれに役割が異なります。中には、炎症や発熱を促す働きをしている細胞や、痛みを誘発する物質(発痛物質)を分泌させる細胞などもあるのです。これらの細胞の働きによって、肩の周囲に炎症や痛みが起こり、なおかつ増幅されたりしています。その一方では、炎症や痛みに関わる物質を中和し、鎮静化させる働きを持った細胞もあります。

 

炎症が起きて痛いときには、それに関わる細胞が優位に働いており、炎症が治まり痛みが和らいできたときには鎮静化させる細胞が活発に働いているわけです。つまり、炎症は一種の防御反応であり、治る過程で起こる現象ともいえます。

 

通常、炎症は2~3日で治まるものですが、肩に限らず関節の場合は使い続けてしまうことが多いために炎症が長引く傾向にあります。特に四十肩・五十肩では、自然に治るケースがほとんどですから、受診が遅れて悪化させることがあるのです。

 

中には、体は健康でどこも悪いところはないにもかかわらず、痛みを訴えるケースもあります。これは、悩み事を抱えているなど過度のストレスが原因で起こる心因性の痛みですので、心療内科の領域となります。

 

体の痛みが原因で心のバランスを崩すこともあれば、心が原因で体に痛みを引き起こすこともあり、「心身」というように心と体は連動していますので、いま現れている痛みには早い手当てが必要です。

「肩」に痛みを感じたら読む本

「肩」に痛みを感じたら読む本

鈴木 一秀

幻冬舎メディアコンサルティング

四十肩(五十肩)の発症率は70%を超え、もはや国民病と言っても過言ではありません。 一般に、肩の痛みや違和感は放置する人が多いのが実情ですが、手遅れの場合、尋常ではない痛みと共に日常動作をままならなくなり、最悪の…

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