適切な治療を受けずに放置しまいがちな「肩」ですが、放っておくとやがて肩関節が硬くなり、痛みは取れても動かなくなってしまうこともあります。本連載では、肩の基本的な知識を見ていきます。

腕が自由に動くのは、腕と体幹をつなぐ「肩」のおかげ

私たちは、腕をぐるりと360度回すことができます。これほど自由に動かせる部分は、身体の中にはほかにありません。これを可能にしているのが、腕と体幹をつないでいる「肩」なのです。

 

ほとんどの人は、普段の生活で腕の重みを感じることはないと思いますが、疲れていたり、肩が凝っていると腕が重たく感じたり、だるくなった経験があるのではないでしょうか。

 

実は、片方の腕だけで体重の6パーセント、つまり50キロの人では3キロもあるのです。おかげで、腕がぶら下がっている肩には、常に負担がかかっていることになります。

 

いま、私は「肩」と言いましたが、皆さんは「肩」と聞いて、どの部分を思い浮かべたでしょうか?

 

ぐるりと腕を大きく回せる肩関節の部分を“肩”という人がいれば、その肩関節から首の横までという人、あるいは肩凝りを考えると首の横から背中の肩甲骨あたりまで、という人もいます。人によって肩の捉え方が異なりますので、「肩が痛い」といっても正確には“首”であることも少なくありません。

肩関節は背中に浮いているような、実に頼りない構造

そこで、肩を理解していただくために、どこまでを「肩」というのか、まず骨格から見ていくことにしましょう。

 

人間の体は206個の骨で構成され、これらの骨と骨をつないで動きをスムーズにしているのが関節です。関節は体のいたるところにありますが、場所によってそれぞれが適した構造をしています。例えば膝関節は、歩行や立ったり座ったりの動作をスムーズに行うために、前後方向に動く構造をしています。

 

肩は、体の前側では頸と胸の間を横に走る細い鎖骨、背中側では逆三角形をした肩甲骨(別名:貝殻骨)という2つの骨でできています。

 

鎖骨は、内側の端は胸の前面の胸骨とを靭帯という線維状の帯でつないで胸鎖関節をつくり、外側の端は肩峰(肩甲骨の最も高い部分)と靭帯でつないで肩鎖関節をつくっています。そして、肩甲骨は外側にある関節窩という窪みのところで上腕骨の丸い頭(上腕骨頭)との間に肩甲上腕関節をつくっています。この肩甲上腕関節を、一般には「肩関節」と呼んでいます。上腕骨と肩峰は、第2肩関節といわれています。

 

[図表]肩関節の骨格

このように骨格から見ると肩は、前面では鎖骨によって胸骨とつながり、背中側では鎖骨によって肩甲骨とつながっています。したがって、肩関節というときにはこれらのすべてを含んでいますので、「肩」というとかなりの広範囲を指すことになります。

 

そして、これらの関節がスムーズに動くことで、腕をいろいろな方向に動かすことができるのです。中でも肩甲骨の動きは重要です。例えば、腕を上に高く上げると、肩甲骨も上に回旋して、上腕骨頭を下から支えるように補助します。ボクシングのように腕を前に突き出すと、肩甲骨も前外側に傾き、上腕の動きに追従するように動きます。

 

試しに、反対側の手で肩の部分を押さえて肩甲骨を動かさないようにして、腕を横に上げてみてください。水平より下までしか上がらないはずです。それ以上に動かそうとすると、肩甲骨が動いてしまうのを確認することができます。

 

したがって、皆さんがイメージしているよりも、腕を動かすには広い範囲の肩が支えていることになります。

 

それほど大事な働きを担っている肩ですが、股関節や膝関節などの大きな関節が骨に支えられている部分が大きいのに対して、肩関節は骨と骨との接触面が小さく、肩甲骨は鎖骨の下でつり下げられるように連結しています。いうなれば背中に浮いた状態で、実に頼りない構造をしています。

「肩」に痛みを感じたら読む本

「肩」に痛みを感じたら読む本

鈴木 一秀

幻冬舎メディアコンサルティング

四十肩(五十肩)の発症率は70%を超え、もはや国民病と言っても過言ではありません。 一般に、肩の痛みや違和感は放置する人が多いのが実情ですが、手遅れの場合、尋常ではない痛みと共に日常動作をままならなくなり、最悪の…

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