応急処置ですませると、手痛いしっぺ返しが…
●CASE5 費用を惜しみ中途半端な修正を行った結果再沈下が起き、コストが倍増・・・
(小売業・E社・店舗)
広い土地の上にある建物が傾いた場合、修正する面積も広くなりがちで、どうしてもコストがかかります。だからといって、費用を惜しむあまり応急処置的な修正ですませてしまうと、その後に手痛いしっぺ返しが待っていることがあります。
青森県のとあるスーパーは、建物が完成してからわずか4カ月で110ミリも沈下してしまいました。
開店から半年もせずに建物に支障が現れたわけですから、その瑕疵を問われるのはスーパーではなくそれを施工した建設会社や設計事務所となります。実際にこの事例は、スーパーを施工した建設会社からの依頼で着手しました。
調査の結果、かなり広い部分で沈下の症状が表れていることが判明。私たちとしては、それを全体的に直すプランを提案しました。しかし建設会社は、なかなか首を縦にふりません。何度も提案を重ねた上、最後には、「大きく沈下している部分のみ修正する」という応急処置的な決定がなされました。
お客様が「ここまででいい」と決定したら、私たちとしてはそれに従うしかありません。でもそういった時に必ず思うのは、「次はいつ、この現場に来ることになるか」ということです。そして経験上、その予感が外れたことは一度もありません。
案の定、このケースでも、修正工事を行った以外の部分で沈下が発生、悪化し、再び私たちのもとに修正依頼がありました。
中途半端な対応だと、将来高い確率で再沈下が起きる
確かに依頼主の建設会社からすれば、修正費用というのは自分たちの利益の中から出さねばならないため、できるだけコストを抑えたいでしょう。
そしてまた、スーパーに対しても、建設の「プロ」としてそれらしい意見を述べることで、うまく納得してもらえるかもしれません。スーパー側にしても、とりあえずお客様に傾きを感じさせないレベルのみの修正でよしとする考えもあるでしょう。
ただし、こうしてコストを気にするあまり修正の範囲を中途半端にすると、将来的に高い確率で再沈下が起きます。
結局は2回目、3回目の施工が発生する上、建物にもダメージが蓄積して補強が必要となり、トータルで何倍ものコストがかかるという本末転倒なことになってしまうのです。直すなら思い切って全体的に直したほうが経済的であるといえるでしょう。