前回は、工場・倉庫の「わずかな床の傾き」が経営に及ぼす悪影響について紹介しました。今回は、売上の減少や健康被害を引き起こしかねない、工場の「床の傾き」の悪影響をより具体的に見ていきます。

「空間ロス」で倉庫業に大打撃

もともと倉庫というのは、モノを一時保管しておくのが目的の建物ですから、内部空間を目いっぱい使うことができれば、それが理想的ということになります。目いっぱいは無理であっても、荷物の収容率が倉庫の事業計画の土台となっていることは、ここで私がお伝えするまでもありません。

 

ところが、そんな倉庫で不同沈下が起きると、その利用効率に障害が出てきます。もちろん工場のストックヤードなども同様です。床の傾き・たわみは、そこに収容できる荷物の量に直接の影響を与えてしまうのです。

 

傾いた床面に荷物を積むと、当然、その荷物も傾きますから、荷崩れを起こす危険性が高まります。自社の荷物であれ、お客様の荷物であれ、荷物を安全に保管するという、本来の役割を果たせません。

 

信用問題にも発展しかねませんから、それを避けるためには、積み段を少なくしたり、傾きの大きい区域を使用しないようにするしか解決策はありません。そうして、これまで100個積めていた荷物が90個に減ったとしたら、倉庫業であれば売上の10%減に直結するといわざるをえません。

 

床の傾き・たわみは、空間のロスを生みます。いわば空間そのものが商品ともいえる倉庫業では、大打撃であるに違いありません。

「床の傾き」のために三半規管や自律神経に変調が…

●CASE1 床の傾きで健康被害、

社員から「気持ち悪い」という訴えが相次ぐ(金融業・A社・店舗)

 

企業が「傾いた床」を放置しておくと、どうなってしまうのか。その怖さが垣間見られた事例をまずご紹介します。静岡県にある、とある銀行では、そこで働く社員から、上司に「働いていると具合が悪くなる」という訴えが相次ぎました。会社側がその原因を調べたところ、どうやら床が傾いていることがわかり、私たちに修正の依頼が入ったのでした。そこで店舗の床レベルを測ってみると、基準となる位置から81ミリも傾いていることがわかりました。

 

[図表1]レベル測定結果図(単位mm)

 

こうした傾きによる健康被害は、主に三半規管や自律神経に変調をきたすことで起こるといわれています。私たちは仕事で傾いた建物に入ることが多いため慣れており、加えて一時的にしかいないので健康に問題はありません。しかし、そこで日々長時間働いている人にはかなりの影響が出ます。症状の程度には個人差がありますが、知らぬ間にストレスが蓄積し、うつ病になってしまうこともあります。放っておくと非常に深刻な問題につながってしまうのです(下記の図)。

 

[図表2]建物の傾斜角度と健康被害

出典:日本建築構造技術者協会(千葉)
出典:日本建築構造技術者協会(千葉)
 

会社側の視点に立てば、傾きを放置しておくことで、社員の作業効率は下がり、集中力の低下からミスも多くなってしまいます。また最悪のケースとして、社員に健康被害が現れ、労働基準監督署に訴え出られれば、損害賠償請求はもちろん会社の社会的信用に大きな傷がつくことにも成り得ます。

 

幸いなことに、A社は社員からの訴えを真摯に受け止め、健康被害が軽度なうちに手を打つことができました。もしもあなたの会社で同じような訴えがあったとしたなら、まず床面の傾きを疑い、できる限り早急に調査することをおすすめします。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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