自分の理解が及ばない金融商品には手を出さない
銀行の定期預金は、日本経済がデフレからなかなか抜け出せないこともあり、低金利時代が続いています。そのため、定期預金だけでは貯蓄が増えないばかりか、インフレーションが起きたら資産価値が目減りするのではないか、という不安すらあります。そこで最近では、財産を投資商品で運用する人が増えてきました。
筆者が考えるに、投資を行っている人は、次の2種類に分けることができます。
●趣味として楽しんでいる人
●勧められたからやっている人
まず、「趣味として楽しんでいる人」は、利益を得ることはもちろんですが、自分の予想が当たる快感や、株価のチャートを眺めるときのワクワクした気持ちを得るために投資をしているようです。こういう人は、自分の理解が及ばない金融商品などには手を出さないことに注意しつつ、経済情勢や財布と相談していければ安心です。
問題は、「勧められたからやっている人」です。
誘ってくるのは、多くの場合は銀行です。まとまったお金を銀行に預けていると窓口で声をかけられて、「一部を投資信託や保険で運用してみないか」などと持ちかけられます。なぜ銀行が投資商品の営業に熱心なのかといえば、金利が低いということは、銀行が企業に融資したときの利子も少ないということであり、代わりに、金融商品を販売する際の手数料に、収益源として期待をかけているからです。
こうした場合、自分の判断で運用しているわけではないので、投資した商品の現況が理解できていないことが多いうえに、相場が変わるごとに、銀行の担当者の勧めるがままに商品を入れ替えて、財産がどんどん目減りしてしまう人までいます。
自分の理解が及ぶ範囲で、納得して運用できていないのであれば、そもそも投資を行うべきではないでしょう。
現金が必要なときにすぐに使えるようにするには…
では、「趣味として楽しんでいる人」は、人生の最後まで投資を楽しんでも良いのでしょうか?結論から言うと、そうではありません。残念ながら、高齢になっても投資を続けていくと、問題が2つ出てきます。
ひとつは、有料老人ホームの入居費用、家のリフォーム代など、まとまった資金が必要となったとき、すぐに現金化できるとは限らないという問題です。投資商品は常に値が動いているので、お金を使いたいときに利益が出ている保証はありません。
大きく損が出ている状態でも、無理に売却して現金化しなければならないケースが生じてしまいます。ですから、老後の財産が減っていくに従って、徐々に投資商品を現金化していくのが得策といえます。もちろん、必要なお金を他に持っていて、預貯金から融通できるのであれば問題ありません。
もうひとつは、認知症や寝たきりになってしまった場合に、本人が手続きをできなくなることです。こうなると原則として、投資商品を解約することも、追加することもできなくなるので、そのまま放置しておくしかありません。
やがて本人が亡くなって、家族が投資商品を相続することになりますが、これには名義人の変更など厄介な手続きが山積みです。相続人も扱いに困ってしまうでしょう。
これらを考えると、たとえ趣味として投資を楽しんでいるとしても、高齢になるに従って投資商品の割合を減らし、預貯金にシフトしていくのがベストでしょう。勧められて投資をしている人は、すぐに運用の見直しを。