今回は、相続税の税務調査の1日のスケジュールと、徹底的にチェックされるものについて見ていきましょう。※本連載は、エクスプレス・タックス株式会社の代表取締役で、税理士の廣田龍介氏による著書、『事例でわかる高齢化時代の相続税対策』(毎日新聞出版)より一部を抜粋し、相続の基本的な知識を、事例を交えながら紹介します。

預金通帳の保管場所から尋ねてくる調査官

調査官はまず、家にある預金通帳すべての保管場所を尋ね、実印、銀行印、認め印をすべて出すよう求める。保管場所が引き出しの中の場合、引き出しのまま持ち出して、テーブル上で中身を出して確認する。高額な品物の保証書、領収書が入っていることが多いからだ。言うまでもなく、お金の出と入りを調べるためである。

 

金庫がある場合は、中身をすべて出して確認。保険証券、不動産権利証も、その保管場所を確認し、周辺まで調べる。大事なもののそばに大事なものがある、という法則に従っている。

 

昼食を挟んで午後も調査は続く。預金通帳のお金の動きの確認、金庫の内容物、通帳保管引き出しの内容物、権利証保管場所周辺の書類の確認、銀行の貸金庫があれば、午後3時に銀行の貸金庫室に移動して確認、確認中の書類の借り出しと預かり証交付、そして午後4時ごろ調査は終了する――。

 

以後、税務署とのやり取りは税理士を介して行う。税理士立ち会いの上、税務署員と相続人との再面談もあり得る。およそ1カ月後、税務署から調査内容の報告・確認が税理士に伝えられる。申告漏れがあるなら、必要に応じて修正申告をする。この場合、加算税や延滞税がかかることもある。

税務調査が入るのは、申告4件のうち1件の割合

国税庁の公表資料によると、14事務年度(2014年7月〜15年6月)に行われた相続税の実地調査は1万2406件。14年分の申告件数が約5万6000件なので、およそ4件に1件の割合で調査が入ったことになる。

 

実地調査件数のうち、81.8%にあたる1万151件で申告漏れなどが見つかった。その課税総額は3296億円、1件あたり2657万円だった。

本記事は、毎日新聞のニュースサイト「経済プレミア」に2015年6月から連載されている「高齢化時代の相続税対策」と、同名の書籍(毎日新聞出版刊)を元にしています。その後の税制改正などには対応していない可能性もありますのでご了承ください。

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

廣田 龍介

毎日新聞出版

相続税が増税され、富裕層でなくても相続の正しい知識と対策が必要な時代になりました。少子高齢化・長寿化で生前対策の重要性も増しています。あなたの大事な資産を生かす方法を、税理士の廣田龍介さんが指南します。毎日新聞…

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