前回は、SNSを活用して外国人旅行客に情報を伝える方法を取り上げました。今回は、インバウンド客を呼び寄せる「口コミ記事」の作り方を見ていきます。

観光場所の概要、歴史的背景、住所、交通情報を掲載

前回に引き続き、口コミ発信プロジェクトの具体的な進め方を見ていきます。

 

記事の内容は、留学生ボランティアたちに任せています。自分たちが行きたい場所に行き、思ったことを思った通りに伝える方が、より魅力的な記事になると考えているからです。逆に、これはいけない、あれはダメなどと細かいルールを押しつけると、留学生側はやる気を失い、記事もつまらないものになってしまうでしょう。

 

ただし、いくら自由に書いていいといっても、いくつかの制約は設けなくてはいけません。この事業の目的は、あくまで「外国人旅行者に観光地の魅力を伝え、行きたいと思わせる」こと。その方向性に合うよう、必要なルールを決め、学生に周知する必要があります。

 

私たちはまず、面接に合格した留学生たちを集めてオリエンテーションを行いました。早い段階で情報共有や説明を行えば、こちらにとっても留学生にとっても手間がかからずに済みます。逆に、後から問題が生じるたびに「このような書き方はいけない」などと伝えるのは、面倒なだけでなく、留学生のモチベーションダウンにもつながってしまいます。

 

1つ目の「記事に書いてほしいこと」を伝えるために、まずは事業内容の再確認からスタートします。面接時に説明したものよりさらに細かく、A4サイズ1枚に収まる程度の文章でプロジェクトの内容を説明しました。こうすることで、留学生に「SNSに記事を投稿する目的は何か」という意識づけをしています。

 

また、過去に書かれた優秀な記事も見せておくことも必要です。「自由に記事を書いてください」といって留学生に丸投げすると、どういったものが求められているかがわからず混乱します。もし、過去に類似の記事があれば、これも記事の方向性を示すのに役立つのです。

 

外国人旅行者がほしがる情報を必ず入れることも指導します。その観光スポットの概要や簡単な歴史的背景、住所や交通情報は必須です。

ネガティブな発言、あまりにローカルな情報はNG

2つ目の「書いてはいけないこと」で一番大切なのは、「ネガティブな発言を行わないこと」です。

 

このプロジェクトの目的は、中部地方にインバウンド客を呼び寄せること。ですから、観光スポットや周辺の店舗に対してマイナスの印象を与える発言は控えるように伝えました。また、差別的な表現は絶対に書かないこと、そうした表現をした場合は記事を修正・削除する可能性があることも説明しておかなければなりません。

 

地域にある小さな公園のように、あまりにローカルな情報もNGです。仮にその人が強い思い入れを持っているスポットであっても、海外から日本に来る旅行者にとっては不要な情報であるからです。

 

また、日本全国に展開しているチェーン店のように中部地方に特有ではない話題も、基本的には取り上げない方針です。こうしたNG項目を設けておくことで、「インバウンド旅行者が興味を持ちそうなスポットを取り上げる」という目的からはずれないようにします。

 

写真に関する注意も必要です。他人が撮影した写真を無断で掲載しないこと。また、人物の写った写真を記事に使用する際には、必ず写っている本人に許可を得ることを徹底しました。学生の中には他人の著作権や肖像権についての意識が薄い人もいますので、こうした注意は不可欠です。

 

また、観光地の入場料や、お店で食べた料理の値段については明記しないルールにしています。SNSに投稿した後で価格が変わる可能性があるからです。

 

[図表]写真を多めに掲載することも「いいね!」獲得の秘訣

外国人リピーターを確実に増やす インバウンドコミュニケーション 成功の秘訣

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加藤 啓介

幻冬舎メディアコンサルティング

訪日外国人の急増によって、インバウンド施策は盛り上がりを見せています。2015年1-9月の訪日外客数は1,448万人、すでに2014年1年間の訪日外客数1,340万人を上回っています。 しかし、今後円高や中国株安によって、今までのよ…

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