前回は、クリニックの開業場所は大都市圏の郊外が狙い目な理由を解説しました。今回は、クリニックの開業に向く「競合の少ない地域」について見ていきます。

10万人当たりの医師数が少ないのは岡崎市、船橋市・・・

前回の続きです。

 

ともあれ、人口当たり医師数の少ない地域で開業することで、集患が楽になることは事実です。また、埼玉県、茨城県、千葉県に医師が少ないといっても、それぞれの都道府県の中でも医師の偏在はあります。

 

たとえば、人口10万人当たりの医師数が350人を超える政令指定都市は、京都市(410人)、熊本市(408人)、岡山市(384人)、福岡市(364人)、東京都区部(355人)となっています。

 

逆に、人口10万人当たりの医師数の少ない都市はといえば、岡崎市(129人)、船橋市(136人)、豊田市(150人)、東大阪市(153人)、さいたま市(169人)、いわき市(172人)、宇都宮市(183人)、豊橋市(196人)、横須賀市(196人)、豊中市(199人)が、200人未満で目立っています。

 

裏を返せば、これらの都市で開業することは、医師不足に悩む地域のためにもなり、経営も安定させることができるため、最善の策ということになります。

 

実際、勤務医で比較しても、人口10万人当たり410人の医師がいる京都市と、人口10万人当たり129人の医師しかいない岡崎市とでは、明らかに給与相場が異なります。

 

私の知人の医師は、京都市に自宅があるのですが、わざわざ岡崎市のクリニックを選んで勤務しているそうです。片道、車で1時間半かかるそうですが、ワークライフバランスを考えると、その方がよいと感じたのだそうです。

人口30万~60万人の中核都市が穴場

愛知県岡崎市は、人口が38万人の中核都市です。県庁所在地である名古屋市からは車でも電車でも45分程度で、東京都から横浜市やさいたま市に行ったり、大阪市から神戸市に行ったりするのと同じ感覚になります。まさに、大都市の郊外に当たります。人口が38万人というのは、東京都区部を除いた都市の中では全国49位であり、大都市とはいえないものの、決して小さくはない都市です。

 

同じような人口の都市として、愛知県では一宮市や豊橋市、大阪府の吹田市、長野県の長野市、群馬県の高崎市などがあります。このような、人口30万~60万人の中核都市は、生活に不便なほど田舎というわけでもなく、かといって周辺で一番の大都市というわけでもなく、郊外の住宅地として暮らしやすい環境にあります。

 

また、物件を購入するにしろ、賃貸するにしろ、その価格は大都市に比べれば総じて安価です。たとえば、医師が少ないことで知られる三河エリア(岡崎市、豊田市)の住宅地の坪単価は30万円程度です。これが名古屋市になると、郊外でも40万~50万円はするでしょう。

 

一般に、医師は地縁のない地方や過疎地での生活を嫌がって、東京や大阪などの都会で開業したがる傾向がありますが、人口30万~60万人の中核都市は見過ごされがちなため、競合が少ない穴場といえるでしょう。

本連載は、2017年1月26日刊行の書籍『自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

市川 直樹

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医は慢性的な医師不足で時間外の労働が多く、給与も働きに見合わず、過酷な労働環境におかれています。 一方、そうした状況から理想の医療の実現を目標に開業する医師もいますが、都市圏のクリニックは今や乱立状態にあり…

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