前回は、患者が集まるクリニックを目指すにあたり、最優先課題となる立地の選定方法を解説しました。今回は、クリニック候補地の「集患見込み」を把握するためのデータ収集術を見ていきます。

さまざまな企業が調査してくれる来院者数や診療報酬

幸いなことに、その診療圏にどれだけの人口があるのか、またそれらの人々が、年齢別にどれだけ病気を患うかといったデータも、たいていは入手できます。

 

ですから、クリニックの候補地を見つけたら、そこで1日にどれだけの患者の来院が見込めるのか、それによってどれだけの診療報酬が得られるかを、概算で構わないので見積もってみることが大切です。

 

依頼すれば、医療機器メーカーや薬品卸会社、建設会社などさまざまな企業が調査をしてくれるはずです。多くの人は、一社のみの調査を参考にするのですが、これらを数種類取り寄せて分析することが理想です。なぜなら、調査書によって、重視している調査内容が異なるからです。たとえば医療機器メーカーの出す調査書であれば、そのエリアで卸している医療機器の稼働状況や交換した部品の履歴などから、競合するクリニックの集患やよく出している薬をリサーチすることができますし、薬品卸会社であれば出された処方箋の枚数のデータをもとに調査をします。建設会社であれば建設したクリニックの数や、実際に患者が何人来ているかを調査します。つまり同じような調査であったとしても、その企業の得意分野によって出してくるデータが少しずつ違うわけです。

 

そのため、いくつかの調査書を請求したうえで、開業するクリニックの診療科目に合わせて複眼的にデータを解析しなければなりません。内科などであれば専門的な薬を使うことはないため、競合のクリニックを研究するには薬品卸会社や医療機器メーカーのデータが特に参考になるでしょう。一方小児まひや低身長などといったより専門的な分野をメインにしたいのであれば処方も特殊になるため、そういったデータは必要ない場合もあります。

近隣の競合クリニックの情報をいかに入手するかがカギ

調査書は1枚請求するのに数十万円程度かかります。仮に3枚請求すれば100万円単位の出費になりますが、決してそこで躊躇してはいけません。1㎞圏内、3㎞圏内の競合するクリニックの情報をいかに手に入れるかが、クリニック開業を成功させるための重要なカギなのです。

 

もちろん複数枚の調査書を分析するには、医師だけでは手に余ることもあるでしょう。そこで一定の業種に属していない私たちのようなコンサルタントが間に入ることで綿密な分析が可能になります。

 

この見積もりで採算が合わないようであれば、その立地はクリニックの開業には適していません。どれだけ家に近かろうが、物件を気に入ろうが、クリニック経営という観点からは決して選んではならない場所なのです。

本連載は、2017年1月26日刊行の書籍『自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

市川 直樹

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医は慢性的な医師不足で時間外の労働が多く、給与も働きに見合わず、過酷な労働環境におかれています。 一方、そうした状況から理想の医療の実現を目標に開業する医師もいますが、都市圏のクリニックは今や乱立状態にあり…

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