ますます激化するトランプ大統領と議会共和党保守派の対立――。今後のアメリカの政策や経済に、一体どのような影響を及ぼすのでしょうか? 今回は、トランプ政治の現況と、アメリカ経済の行方を検証します。

トランプの指導力に翳り? オバマケア代替法案を撤回

米連邦準備理事会(FRB)が、3月15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(0.25%)の利上げを決定した後、市場の注目は、米議会での医療保険制度改革法(オバマケア)の改廃法案である「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト(AHCA)」の採決へと移行した。

 

しかし、結局、下院共和党保守派の票を取りまとめきれず、トランプ大統領は法案を撤回するという事態に至った。

 

 

議会での、大統領と与党共和党保守派議員という対立はある程度予想されていたものだが、予想よりも早くこうした不調が表面化したことは、「トランプ指導力の翳り」であるとの指摘もあり、トランプ大統領の今後の政策展開への期待感が剥げる形で、株も米ドルも下落、ダウは27日には20,500台を割り込み、ドル円も110円台前半まで売り込まれた。

 

もとより、今回のトランプ当選後の株高・米ドル高の背景には、新政権下での政策期待が強く、むしろ期待先行で上がってだけに、期待感が萎めば、株や米ドルの下落圧力となることは否めない。

 

大統領と議会の駆け引きは、あくまで序章に過ぎないと言われている。今回は、より強硬な方針を主張する与党共和党の保守派を説得できず法案撤回に追い込まれたが、トランプ大統領は、医療保険制度改革を棚上げして、税制改革に注力すると表明して、何とか期待感を維持した形である。

一方で米国経済は堅調…ドル円の上昇トレンドは継続か

30日、トランプ大統領は、共和党保守派下院議員で構成される「フリーダム・コーカス」のメンバーに向けて、「フリーダム・コーカスが早急に協力しないなら、共和党の政策課題をすべて損なうことになる。」とツイートして保守派を牽制している。

 

共和党のライアン下院議長は、「大統領の不満は理解できるし、共有する」として、共和党内で対話継続を促すと仲介役を果たすと表明しているが、今後、こうした保守派議員との緊張したやり取りは続くだろう。

 

そして、次の注目の税制改革だが、そもそも大統領側の予算案ともいえる「予算教書」は、詳細が明らかにされるのは5月までずれ込む予定である。その後、議会が予算関連法案を審議することになるので、歳出法案の成立までには、数ヶ月から半年ほどの時間を要することになる。当面は、期待と厳しい現実の間を揺れ動くような形となるだろう。

 

しかし、これは、昨年から言い続けていることだが、見過ごしてはならないことは、米国経済の状況であろう。15日にFRBが利上げに踏み切った最大の理由は、米国経済が足元堅調であることにある。雇用の状況は引き続き締まっており、賃金の上昇、消費の堅調さは継続している。

 

また、米国のインフレ率は着実に上向いており、減税やインフラ投資の規模が期待されるほど大規模なものでなかったとしても、じり高のトレンドは継続している。実際に、前述の法案が撤回された後でも、米地区連銀総裁たちの発言は、2017年内での3回の利上げを支持するものが多いという点も、見落とすべきではない。

 

仮に税制改革法案の成立が遅れ、これが米国経済を押し上げる時期が後ろ倒しになったとしても、米景気の現状を鑑みるに、今年中に、腰折れに至る可能性は極めて低い。それを見込んで米金利が再び上昇に向かう公算は大きく、ドル円での緩やかな上昇トレンドは、継続すると予想する。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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