前回は、海外では製品販売より「サービス販売」のほうが難しい理由を紹介しました。今回は、海外企業との業務提携において、「ライセンス契約」の留意点を見ていきます。

ライセンス契約終了後、旧パートナーがライバルに!?

前回の続きです。

 

一方、ライセンス契約とは、ノウハウの一部を技術供与のようなかたちで提供するものです。フランチャイズ契約に比べれば、現地企業には創意工夫の余地があります。といっても、日本のブランドの名義貸しも行っているので、まったく自由になるわけではありません。ただし、フランチャイズのように、すべてを管理するわけではないので、日本企業の負担はフランチャイズ形式に比べれば軽くなります。

 

ライセンスでもフランチャイズでもかまわないのですが、現地の企業と手を組む場合にはパートナー選びに細心の注意を払う必要があります。というのも、現地のパートナー企業が欲しいのがノウハウだけであった場合、3年なり5年なりの期間が終了すると同時に、更新せずに契約を切られてしまったというケースが散見されるからです。

 

この場合、現地企業は日本企業のブランドネームを使うことはできなくなりますが、ノウハウを十分に吸収した現地従業員を使って、同じようなサービスを同じようなレベルで新たに展開することができます。

 

日本企業も、また新たなパートナーを見つけてサービスを継続することはできますが、旧パートナーが強力なライバルとして立ちはだかってくることは想像に難くありません。

 

このように、信頼できない現地企業とむやみに組んでノウハウや技術を移転してしまうと、後に裏切られたと感じるような事態になることもあります。

 

もちろん、台湾の旺旺集団のように信頼できる現地企業もありますので、提携がすべて良くないということはありません。パートナー企業の選定が大事という話です。

 

私が知っているだけでも、とある外食チェーン店が、現地の似たような企業と組んで海外進出したところ、ノウハウだけ取られてしまって数年で撤退する羽目になったという例があります。

 

この企業は、似たような外食チェーンだから相性が良いだろうと考えてパートナー企業を選んだのですが、似たような外食チェーンであったが故に、現地企業は日本企業の継続的な支援を必要としなかったのです。おそらく日本企業のレシピとサービスのノウハウを学んだら、それでよいという感じだったのでしょう。

長続きするのは「補い合う形態」のパートナー

逆に、お互いに相性が良くて、提携がずっと続いている例があります。

 

この企業もやはり外食チェーン店なのですが、現地でパートナーに選んだのは、同じような外食産業の会社ではなく、食器(什器)会社でした。この場合は、お互いに欠けているものを補い合う形態になり、お互いに継続的に相手を必要としていたので、パートナー関係を長く続けることができています。

 

これ以外の例としては、現地の不動産・建設会社をパートナーにするケースや、資本のみ提供して口は一切出さないといういわゆる〝サイレントパートナー〟と組むというケースなどがあります。

 

ですから、現地のパートナーを選ぶときには、将来の競合になりそうな企業をパートナーに選ぶことは避けたほうがいいのではないかと思っています。似たような能力を持っている企業同士で組むと、主導権の取り合いになって喧嘩になることが多いからです。

国内頭打ち商品で利益を生み出す 海外進出戦略

国内頭打ち商品で利益を生み出す 海外進出戦略

田中 義徳

幻冬舎メディアコンサルティング

国内では売上・利益ともに頭打ちで生き残りが厳しく、海外進出を試みても撤退を余儀なくされる――中小企業はどこに活路を見出せばいいのでしょうか。 海外のマーケットでは、日本国内と同様のマーケティング、営業手法で成果…

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