前回は、自社株を相続する際に気をつけたい「遺留分」の留意点を解説しました。今回は、自社株相続の際、ほかの相続人から「遺留分減殺請求」を受けるリスクを減らす方法を見ていきます。

遺留分を有する相続人に「遺留分の放棄」を求める

他の相続人から遺留分減殺請求が行われた場合、後継者の自社株の承継が難しくなるおそれがあります。そのような事態を防ぐためには、遺留分を侵害しない形で計画的に贈与等によって自社株を後継者に移転しておくことが必要です。また、その他の対策として、①遺留分の放棄と②遺留分の特例を利用するという選択肢もあります。

 

①遺留分の放棄

 

遺留分は相続開始前に家庭裁判所の許可を得て放棄することができます。そこで、現社長や後継者らが、遺留分を有する相続人に対して遺留分の放棄を求めるのです。手続きにより遺留分減殺請求のリスクを減らすことができます。

要件を満たしていれば、「遺留分の特例」が利用可能

②遺留分の特例

 

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)では、事業承継を円滑に進めることを目的として遺留分に関する特例が定められています。この特例を活用すると、相続人全員の合意のうえで、現経営者から後継者に贈与等された自社株式について以下のような取り扱いが可能となります。

 

●遺留分算定の基礎となる財産から除外できる

●遺留分算定の基礎となる財産に算入する価額を合意時の時価に固定できる

 

なお、特例を利用するためには、会社、現経営者、後継者に関して以下の要件を満たす必要があります。

 

〈会社〉

●合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場企業である

 

〈現経営者〉

●過去または合意時点において会社の代表者である

 

〈後継者〉

●合意時点において会社の代表者である

●現経営者からの贈与等により株式を取得したことにより、会社の議決権の過半数を保有している

 

遺留分の放棄も遺留分の特例も、遺留分対策としてこれ以上ない効果的な方法であることは間違いありません。他の相続人の同意が前提となるので簡単ではありませんが、親族内経営においては血のつながった者同士、よく話し合いをしておけば、トラブルへの発展は防げるはずです。

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド

「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド

大磯 毅/中山 昌則

幻冬舎メディアコンサルティング

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