後継者候補者には「社長業」自体がわかりづらい
中小企業では親族が後継者になるのが当たり前というイメージがあります。とりわけ、一族で代々経営を切り盛りしてきたような会社であれば、赤の他人が継ぐよりも「親族のほうが安心」という考えが一般化しているといってよいかもしれません。
しかし、後継候補者からすれば「社長業」とはどのようなものなのか、なってみるまではなかなかわかりづらいものです。表面上は何も問題がないように見えていたのに、いざ会社を引き継いでみたら、厄介な難題がいたるところに潜んでいた――次期社長となる者は何の心の用意もないまま、事業を承継した途端にいきなり様々な経営課題に直面することがよくあります。
「誤った対応をすれば、会社が危うい状況に陥るかもしれない……」
自分が抱える責任の重さから、そんな恐怖にも似た感情を抱くのは自然のことです。
後継者が問題を解決できず、衰退した企業は多いが・・・
そして実際、私は会計士としての立場から、これまでに後継者が目の前に突きつけられた問題を解決できないために、衰退していった企業を数多く見てきました。しかし、一方でそうした問題のほとんどは、後継者が事前に経営について十分に理解していれば解決でき、会社は衰退を免れえたのでないかと思うのです。
では一体、後継者は会社を受け継ぐときにどのような課題を意識しておく必要があるのでしょうか? まずは私がこれまでに見てきた具体的な事例を見ながら、事業承継の際に起きやすい失敗やトラブルを確認し、後継者が克服すべき課題を抽出したいと思います。