ソフトを使うとたびたび「残高マイナス」に!?
「この税理士のオジサンは、何を時代錯誤なことを言っているんだ!?」
便利なツールに落とし穴があるというのは一体どういう意味なのか。
一点目としては、「自動的に計算され、キレイな表として出力した時点で満足しやすいこと」が挙げられます。たとえば、お金のやりとりを記録する帳簿の一つである「現金出納帳」。手元でのリアルな現金のやりとりを記帳するものなので、基本的に残高がマイナスになることはありえません。
しかし、従業員に表計算ソフトを使って「現金出納帳」を記帳させているようなケースで、たびたび発生するのです。本来ならば、マイナスになるはずがないのに、おかしい、そんなに使ったはずがないのに…? と、疑問を抱くはずのところが、キレイな表になると数字がマイナスになっても見逃してしまう。あるいは、合わない分を「借入金」として処理してしまっているわけです。
キレイに数字が並んだ表には、「数字=リアルなお金」として見極める目を曇らせるリスクがあるのでしょうか。あまり中身がない資料でも、パワーポイントでキレイに仕上げれば、それらしく見えてしまうことにもつながる話なのかもしれません。
帳簿づけや決算書の作成が「事業の目的」ではない
もちろん、会計ソフトに罪があるわけではありません。
面倒で難しいと言われる青色申告も、ソフトを使えば計算もラクですし、簿記の知識がなくてもOK。時間や手間の短縮につながります。最近は会計の知識がなくても、直感的に入力、記帳ができるクラウド会計ソフトも出ていますので、新しいモノにチャレンジしたいという方は、試してみるのもいいと思います。
しかし、事業の目的は帳簿をつけたり、決算書を作ったりすることではありません。そして、決算上は数字が合っている。あるいは数字上は、売上が上がっていても、手元に現金がなければたちまち事業は立ち行かなくなるのです。
とくにデジタルに詳しい人ほど、ソフトを使いこなすことのほうに夢中になり、さまざまな機能を使いこなすことで満足感を覚えるような傾向も見られます。くれぐれも帳簿や決算書を作った時点で満足するのではなく、数字が出た〝その後〟が肝心と心得ましょう。