サ高住を「町内会のお祭り会場」として解放
一部のグランドマストでは、町内会の秋祭りのお神輿のお休みどころとして、エントランス脇の広いウッドデッキを開放しています。そこではお菓子や飲み物などを提供しています。入居者の多くは、そこで街の人々が来るのを楽しみにしています。
この取り組みから、ご近所のあるご婦人が毎日そのグランドマストへ来るようになりました。9時から17時までエントランスホールまでは出入り自由となっています。そこでは入居者向けに焼きたてのパンを販売しています。彼女はそれを買うついでに入居者とのコミュニケーションを楽しみにしているのです。
もともとは建築時に日当たりが悪くなるという苦情を言ってきた方でした。しかし、今では利用者全員と顔見知り。いずれはここに住んでほしいと思っています。
「移動スーパー」の誘致で自由な買い物を楽しむことも
グランドマストはすべて都市部にあります。そのため周辺の商業施設が充実し、とても便利な立地といえます。ただし、すべての物件がお菓子やお茶といったちょっとした買い物に2~3分で行ける立地というわけでありません。
グランドマストには食堂が併設されていますが、たまには違うものを食べたくなったり、お菓子が欲しくなるときもあるでしょう。そんなときに利用できるように一部(浜田山)の物件では、週に2回移動スーパーに来てもらっています。移動スーパーとは軽トラックに食料品を積んで建物のエントランスまで来てくれる商店です。
軽トラと聞いても侮ってはいけません。その品揃えは約400品目、1200~1500点。まさに徒歩0分のコンビニです。
毎週2回同じ時間に来るので、「次回は旬のサンマを持ってきて」といったように様々なものをリクエストすることも可能です。
買い物は、品物の選択やおつりの計算などで脳のトレーニングにもなります。
また、浜田山の事例では、初回から入居者のほぼ全員が何かしらの買い物をしました。スーパーが来ている間は、ワイワイ・ガヤガヤとイベント状態です。「あなたがそれを買うなら、私はこれを買うからあとで一緒に食べましょう」といったように交流の場にもなりました。このようなことから、今後はより多くの物件に来てもらえるように検討しています。
サ高住に入居して、人生が変わったシルバー世代も
ここで交流によって人生が変わったというある女性(90歳)を紹介しましょう。
彼女は4年前に一人暮らしをしていた自宅が全焼してしまい、入院先の病院から直接こちらに引っ越してきました。
はじめの頃は当然、かなりふさぎ込んでいて食堂にもなかなか来てくれませんでした。そこでスタッフがご飯を部屋まで運んだり、折り紙教室に誘ったりして、周りの環境に慣れていただくようにしました。
すると当初は黒やグレーなどの暗い色の服ばかり着ていたのに、だんだんと花柄などの明るいものを着るようになってきました。
そしてあるときこう言われたのです。
「自宅が焼けてよかった。自宅が焼けてくれなければ、ここに来ることはできなかったし、皆さんに出会うことはできなかった。今は本当に幸せ」。
リビングアテンダーの仕事は基本的に形がないものです。とにかく入居者の希望をすくい取って、快適な空間を提供することなのです。