1日にして「約3.3兆ドル」の株式時価総額が消失
この複雑かつ混沌とした世界をさらに揺るがしているのが英国の「EU離脱」騒動。今後、英国の離脱がEU連合、延いては国際経済にどのような影響を与えるかを知るには時間が必要だが、中国の欧州政策にも影響を与えるのは確実で、今後の動向が注目される。
2016年6月24日、前日の英国のEU離脱が決まったことを受けて世界の株式市場が震撼し、1日だけで約3.3兆ドル(330兆円強)の時価総額が消失した。
翌日以降、株式市場は持ち直したが、今回の出来事は、世界的な金融システム不安を引き起こした2008年の金融危機とは異なる。
米国発の金融危機では、金融機関が世界通貨であるドルの調達が困難になったが、今回懸念されるのは、第2、第3の英国が出現し、それぞれが英国同様に「保護主義」政策を強化することで、世界経済の成長鈍化に繋がるのでは、ということだ。
英国に拠点を置く金融機関は戦略の見直しが必要に
一方で、今回、銀行株の下落が大きかった。その要因は2つあった。1つは、世界経済がさらに収縮する結果、一段と金融緩和が進み、銀行収益を圧迫する懸念があること。
また、欧州ビジネスの本拠地をロンドンに置いている金融機関は戦略見直しが必要になっている。英国のEU離脱で大きな問題になるのが、単一の免許でEU域内での営業が出来る「パスポート制度」。
これまで、多くの日本の金融機関の欧州ビジネスは英国に現地法人を設立して本拠地とし、英当局の認可(免許取得)を受ければパリ、ミラノなどに店舗を出すことができた。しかし、今後この制度を利用できなくなる可能性がある。そうなれば、英国以外のEU諸国に現地法人を作る必要が生じる。
また、保険業界は欧州事業の統括拠点である英国法人が保険のライセンスを取得して、欧州全域で事業展開しているが、新たに欧州大陸側でライセンスを取得する必要がでてきそうだ。当然、こうした組織再編に絡んで人員の移動も必要になり、コストアップ要因になる。