「デフレ経済」からなかなか脱却できない先進各国
資本主義世界が揺らいでおり、経済の動脈を担っている金融機関の役割が問われている。2008年に米国発の金融危機、いわゆるリーマンショックが起こり、世界経済は急速に収縮した。
その危機的状況を救ったのが、世界中の資源を爆食していると批判されながらも、世界経済の需要を一手に引き受けてきた中国。だが、この救世主も一時の勢いが無くなり、いまや、世界経済のブレーキ役になっており、中国発の金融危機さえ言われだした。
また、銀行システム以外での信用供与を行なっているシャドーバンキング問題も懸念されている。
[図表]シャドーバンキングとは?
今日の金融界に課せられているテーマは「低成長時代に金融機関はどのような貢献ができるのか」だ。
低成長は世界中に及んでいる。とくに日本、欧米など先進国はデフレ経済(経済が収縮し、物の値段が持続的に下落)から脱却できずに金融緩和に走り、市場にジャブジャブとお金を流している。が、なぜかそのお金は私たちの社会(資本主義)の未来が明るくなるような使い方がされていない。
いま、金融界はどうなっているのか。その中で、銀行、証券、生・損保といった日本の金融機関は、存在価値を高めるためにどういった行動を取ればいいのか。
国際金融の世界では「ドル基軸時代」が続く
この2008年のリーマンショックを境に、国際金融市場は大きく変わった。なぜなら、経済を牽引してきた米国一国主義の終駕の鐘が鳴った瞬間でもあったからだ。
米国の衰えは、財政赤字が膨らんだベトナム戦争後の1970年代から始まった。1990年代以降は疲弊した経済を得意の金融に依存し、日本をはじめとして欧州諸国、中国などからの資金環流でその命脈を長らえてきた。
しかし、かつての輝きは失い、底流では新時代を告げる鐘が鳴り始めたものの、国際金融の世界では米国がリードするドル基軸時代がまだ続きそうだ。
世界的な金融危機後、金融規制強化を主張した欧州と、規制強化に消極的な米国が対立し、必ずしも足並みはそろわないでいる。米国は、これまで自国を引っ張ってきた成長中心の米国型グローバル化、規制緩和の旗を降ろす考えはさらさらない。
一方で、欧州勢は「米国の過剰な規制緩和が危機を招いた」との批判を今でも持ち、規制強化に反発する米国から主導権を奪おうとしている。
こうした、米国対欧州の対立を尻目に、中国などの新興国が台頭してきた。西側諸国は、中国を自分たちの世界に取り込みたいと思っている。しかし、社会主義国を、資本主義の要である金融システムの要として認知することは諸刃の剣であることも知っている。
しばらくは、欧米中心の金融の世界が続くが、従来の資本主義と、台頭してきた社会主義国・中国=「国家資本主義」の、2つの資本主義が競合する混沌とした時代になりそうだ。