前回は、子どもの頭を柔らかくする「諦めずに頭を使わせる」訓練について見ていきました。今回は、解けない問題への挑戦で鍛えられる、子どもの「考える力」をテーマに取り上げます。

相対性理論の解明に7年をかけたアインシュタイン

7年もの間ずっと、一つの問題を考え続けていた科学者がいます。アルバート・アインシュタイン、現代物理学の基礎となる相対性理論を作り上げた物理学者です。アインシュタインは、ドイツ生まれのユダヤ人であり、1921年にノーベル物理学賞を受賞しています。

 

アインシュタインが相対性理論をどのようにして作り出したのか。彼は実に7年間、この理論について考え続けていたと伝えられています。来る日も来る日も同じテーマについて考え続けたのです。まさに試行錯誤の連続、ところがある日突然、理論の組み立て方が頭に浮かびました。

 

それから先は、わずか5週間で論文を書き上げてしまったのです。7年間も同じテーマについて考え続けることは、おそらく普通の人間には無理でしょう。アインシュタインだからこそ可能だった芸当であり、それゆえに彼はノーベル賞を受賞することができた。何より、現代の物理学の基本となる理論を、たった一人で組み上げてしまったのです。

 

そのアインシュタインは、次のような名言を残しています。

 

「私は頭が良いわけではない。ただ人よりも長い時間、問題と向き合うようにしているだけである」

「大切なことは、何も疑問を持たない状態に、陥らないようにすることである」

簡単に解けない問題に取り組んでこそ意味がある

考え続けることにかけては、数学者も相当にしつこいようです。ノーベル賞には数学部門がありません。そこで数学のノーベル賞ともいうべき賞が設けられています。フィールズ賞と呼ばれ、数学に関する賞としては世界最高と位置づけられています。これを受賞するための条件はノーベル賞よりはるかに厳しい。何しろ受賞の機会は4年に1度しかなく、しかも年齢が40歳以下などの制限があるのです。

 

これまでに日本人の受賞者は小平邦彦(1954年)、広中平祐(1970年)、森重文(1990年)の3人です。この中の森氏は、高校時代から数学の世界では、全国的に知られた存在でした。『大学への数学』という月刊誌があります。その中に学力コンテストと呼ばれる懸賞コーナーがあり、数学の超難問が出題されることで知られています。

 

この学力コンテストでいつも満点を取っていたのが、高校時代の森氏です。しかも森氏の場合、出題者が考えもしなかった美しい方法で問題を解いていました。その解法のエレガントさに惹かれた出題者が、当時の森氏の答案をずっと保存していたという逸話もあるほどです。

 

その森氏はあるインタビューで「解ける問題を考えて、何が面白いのかわからない。解けない問題を考えるからこそ、数学に取り組む意味がある」「問題を考え始めると、つい没頭して朝まで考え続けてしまう」と答えていました。数学者が取り組むレベルの問題ともなれば、答えがあるのかどうかさえわからないのです。だからこそ、考える意義がある。だからこそ、考えることが楽しい。数学者とはすごい人たちだと脱帽します。

東大・京大に合格する 子どもの育て方

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江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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